ハードコア(2016)の映画専門家レビュー一覧

ハードコア(2016)

全編にわたり主人公の一人称視点から映されたSFアクション。見慣れない研究施設で目覚めたヘンリー。妻エステルが機械の手足を装着させ激しく損傷した彼の体を修復させていたところ、謎の組織が襲撃。さらわれたエステルを救出するため、壮絶な戦いに臨む。動画サイトで公開されたFPS(ファースト・パーソン・シューティング)の短編プロモーション映像『HARDCORE』が話題になりクラウドファンディングが成立、長編化された。ヘンリーの協力者を「第9地区」のシャールト・コプリーが、組織のリーダーを「ヴァンパイア・アカデミー」のダニーラ・コズロフスキーが演じる。劇場公開に先駆け、カナザワ映画祭2016にて爆音上映された(上映日:2016年9月24日)。
  • 翻訳家

    篠儀直子

    POV映像で主人公と同化するというよりも、主人公の視界を無理矢理体験させられるアトラクションみたいで、それだけなら高く評価するようなものではないが、面白いのは、客観ショット抜きで次々突拍子もないことが起こるせいで、映画全体がナンセンス・コメディの快作(怪作?)の様相を帯びてくること。これは別に間違った鑑賞態度ではなく、実際、笑いを意図したシーンが多くて、音楽の使い方も可笑しく、さらには謎のミュージカル・シーンまである! 相棒ジミーの設定が最高。

  • 映画監督

    内藤誠

    「一人称視点」の映画としては既にロバート・モンゴメリーの「湖中の女」、小説としては筒井康隆の『ロートレック荘事件』があるけれども、長篇アクションを主演者の頭にカメラを取り付けて撮影しきった実験精神には、現場人間として敬意を表したい。しかも情け容赦なく、銃をぶっ放す主人公は一言も口をきかない。その結果、ヘイリー・ベネット熱演のファム・ファタールがぱっとせず、物語映画にはカット・バックが必要不可欠だと思い知らされる。カッコいいエンディング音楽にほっとした。

  • ライター

    平田裕介

    全篇を一人称視点で貫いたド根性は、たしかに敬服に値する。ハンドガン、ライフル、ガトリングガンとあらゆる銃器をぶっ放し、人体破損も見せ場と心得て画面を死屍累々にしていくのも見事。だが、それを延々と続けられると逆に弛緩状態に陥って、刺激的なものには感じられなくなる。そんななかで逆に際立つのが、何度もヘンリーの前に現れては、そのたびに扮装が違っているS・コプリーの存在。凝った映像やアクションより彼の七変化と怪優ぶりのほうが楽しく感じられてしまった。

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