ハクソー・リッジの映画専門家レビュー一覧
ハクソー・リッジ
メル・ギブソンが「アポカリプト」以来10年ぶりに監督、良心的兵役拒否者として名誉勲章を受けたデズモンド・ドスをモデルにした戦争ドラマ。武器を手にしないと誓った衛生兵デズモンドは激戦地ハクソー・リッジに赴き、銃弾が降り注ぐ中多くの命を助ける。のこぎりで切断したような断崖がそびえアメリカ軍と日本軍が激しく衝突した沖縄・前田高地(ハクソー・リッジ)で、味方が撤退しても信念を曲げず丸腰のまま負傷者を救出したデズモンドを「沈黙 -サイレンス-」のアンドリュー・ガーフィールドが演じたほか、「タイタンの戦い」のサム・ワーシントン、「マトリックス」シリーズのヒューゴ・ウィーヴィングらが出演。第89回アカデミー賞で編集賞・録音賞を受賞。
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翻訳家
篠儀直子
俳優の芝居がきちんと魅力的に撮られているのが美点のひとつで、繊細極まりないA・ガーフィールドはもちろんのこと、微笑ましい求婚シーンでT・パーマーが見せる表情もよく、上官二人がしまいには何だか猛烈にかっこいい。正直、この撮り方と演出は凡庸すぎるのではないかと思う部分もちょくちょくあるのだが、日米両軍兵士が死にものぐるいで戦う戦場のカオス状態は、主人公の行為の英雄性を観る者に生理的レベルでわからせる凄まじさで、これだけ描写されたらさすがに頭が下がる。
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映画監督
内藤誠
メル・ギブソンが「ブラッド・ファーザー」主演に続き、今度は監督として頑張る。衛生兵とはいえ銃にさわらないと主張する軍人が実在し、その素材を長い時間と予算をかけて映画化している。アメリカの将来に希望がもてる話だが、地獄の舞台は沖縄戦で、日本軍の上官が型どおりに切腹自決する展開になると、日本人観客には辛いシーンの連続。最後に優しい顔をした晩年の本人と妻の映像が登場したとき、ほっとした。主人公を支えるテリーサ・パーマーはハリウッド黄金期のヒロイン像。
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ライター
平田裕介
アル中でDV全開の父、どう見ても狂信的カトリック信者だが多くの命を救った英雄でもある息子。メルギブが主人公親子に自身の“闇と光”を重ね合わせ、さらに彼ならではのブルータルな残酷趣味をこれでもかと詰め込んでいる。メルギブの宗教観に寄ったドラマ部分はピンとこないが、戦闘&人体破損描写は素晴らしい。下半身が消失して筋肉繊維がブラブラしている死体を「よっこらせ」と盾代わりに持ち上げてブローニングM1918をぶっ放す、L・ブレイシーの姿にしばし見惚れた。
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