僕とカミンスキーの旅の映画専門家レビュー一覧

僕とカミンスキーの旅

「グッバイ、レーニン!」の監督&主演コンビが再び組んだロードムービー。無名の美術評論家ゼバスティアンは一儲けしようと、かつて脚光を浴びた盲目の画家カミンスキーに着目。新事実を暴こうと旅に連れ出し珍道中を繰り広げるうちに、不思議な友情を育む。12年ぶりのヴォルフガング・ベッカー監督作品出演となったダニエル・ブリュールが野心家の青年ゼバスティアンを、彼を振り回すカミンスキーを「007」シリーズのイェスパー・クリステンセンが演じる。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    20世紀美術史を丸ごと畳み込んだような途轍もない経歴の架空の「盲目の画家」カミンスキーと、彼の伝記を書いて一発当てようと目論む無名の美術ライターの珍道中。「グッバイ、レーニン!」から12年、その間に主演のダニエル・ブリュールは国際的な俳優となった。ヴォルフガング・ベッカー監督のタッチは変わらず朴訥としていて、ウィットと皮肉の効いたユーモアにもどこか微妙なダサさが感じられるのだが、それもあってブリュールは実にリラックスして演じているように見える。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    内村光良のコント番組『LIFE!』に、下世話な質問を鉄のハートで嬉々と繰り出すゲスな記者が出てくるが、記者のあり方や姿勢としては一つの真理だとも思う。その意味で取材対象の画家になりふり構わず接近する自称ジャーナリストの若者は間違っていない。長髪に無精髭のブリュールのゲスっぷりもなかなか。ただ、彼に優れた伝記は書けないだろう。ずっと一緒にいる相手のことをまるで見ようとしていないからだ。ドニ・ラヴァンとジェラルディン・チャップリンはさすがの一言。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    「スパイ大作戦」もどきのアクロバティックなアイディアの前作「グッバイ、レーニン!」を撮ったヴォルフガング・ベッカー監督の12年ぶりの劇映画だ。前作同様アイディアは面白く風刺は効いているが、肝心の主役二人、野心家で一発狙いの美術評論家と、マチス最後の弟子と称する狷介で正体不明の老画家の怪しい道行きが今ひとつはずまない。心から笑ったり、感動したりする瞬間がないのは脚本の問題だろう。二人の演技はいいのだが、キャラクターが十分に練り上げられていない。

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