火花(2017)の映画専門家レビュー一覧

火花(2017)

又吉直樹の第153回芥川賞受賞作を「月光ノ仮面」の板尾創路の監督・脚本で映画化。売れない若手芸人の徳永は先輩芸人・神谷に魅了され、弟子になりたいと申し出る。神谷は了承し、自分の伝記を書いてほしいと頼む。徳永は神谷との日々をノートに書き綴る。共同脚本は、「クローズEXPLODE」監督の豊田利晃。出演は、「キセキ あの日のソビト」の菅田将暉、「彼らが本気で編むときは、」の桐谷健太、「追憶」の木村文乃。
  • 評論家

    上野昻志

    ご存知、又吉直樹の芥川賞受賞作が原作。菅田将暉が駆け出しの漫才師で、そんな彼が一目見て惹かれ、師匠と仰ぐ先輩が桐谷健太という役どころは、合っているだろう。そこから吉祥寺あたりでの暮らしというか、漫才師としての芸を模索する青春グラフィティともいうべき日々が綴られていく道筋は、ほぼ原作に忠実だが、なんか、いまひとつ、ピンとくるものがない。それは、芸というもの自体の?みがたさでもあるが、その?もうとしながらも、捉えきれない難しさが見えないのだ。

  • 映画評論家

    上島春彦

    天才肌の芸人と、彼を師と仰ぐ常識人の芸人、対照的な二人の十年間。お笑い芸を描いた映画はえてして笑えないものだが、これは例外、十分可笑しい。菅田と桐谷の素のキャラが活かされている感じだ。世に容れられない芸風の桐谷に惹かれながらも、そっちに行き過ぎない自分の漫才を模索する菅田という構図は描き方によっては嫌味なものだ。しかし、この作品では桐谷の弾けっぷりがガムシャラでいい。でも、一番いいのは主演陣によるラストの主題歌〈浅草キッド〉の熱唱だったかもね。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    コンビではなく菅田が心酔する兄さんとの話なのが目を惹くが、十年にわたる話の時間経過は文字情報がなければ分からず、活動遍歴も見えない。「仕事がない」「金がない」「解散する」も台詞だけ。頼りがいのある兄さんである桐谷の抜けた部分が描き足りない。最後の漫才は『帰ってきたドラえもん』の焼き直しで感心せず。吉本映画恒例の古めかしい女性像も嫌になる。撮影・美術は良いが職人的技巧が不可欠な内容だけに監督人選は疑問。芸人監督なら品川祐の方が向いていたのでは?

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