世界にひとつの金メダルの映画専門家レビュー一覧

世界にひとつの金メダル

ソウル五輪で金メダルを獲得した選手と小柄な馬の成長を「よりよき人生」のギョーム・カネ主演で活写。幼い頃から父の指導を受け障害飛越競技に打ち込んできたピエール。弁護士の道を捨て、気性の荒い若馬ジャップルーや父とともに再び競技に挑戦するが……。ギョーム・カネは脚本にも携わり、スタントを使わず自ら騎乗し撮影に臨んだ。ほか、息子を愛情深く指導する父を「あるいは裏切りという名の犬」のダニエル・オートゥイユが、ピエールの妻を「隠された日記 母たち、娘たち」のマリナ・ハンズが演じる。監督は「ココ・シャネル」のクリスチャン・デュゲイ。2016年2月28日、日本橋三越本店乗馬サロンピアッフェにてアジア初上映(上映会タイトル:「ピエールとジャップルー 小さな大障害馬」)。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    実話もの。そもそも極めてドラマチックな題材を、監督のクリスチャン・デュゲイと、脚本も執筆した主演のギョーム・カネがすこぶるドラマチックに映像化している。外光を活かした凝ったカメラワークは美しいが、個人的な好みとしてはもう少し渋めに撮って欲しかった気も。原題は「Jappeloup(ジャップルー)」で馬の名前なのだが、そのままは無理だとしても、この邦題はいかがなものか。映画の特徴を全く伝えてない。苦肉の策なんでしょうが。しかし馬という生き物はとても映画的だ。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    ドラマは出来事の羅列ではない。しかしこれではそうなっていると言わざるを得ない。その結果、主人公のデュランには一貫性がなく行き当たりばったりで生きているようにしか見えず、無論それが人間性としてものを言うわけでもない。何より肝心の馬との距離を縮める瞬間がまったく撮れていないのはいかがなものか。そしてラストにそれまで出てきた人たちをあそこまで平等に写す必要があったのか。すべてに光を当てることは要点から目をくらましてしまうことにもなるのではないか。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    脚本主演のギョーム・カネは幼児からの騎乗経験者だし、監督のC・クリスチャンはカナダ代表の馬術選手だったというだけに、馬に関する描写は見事。ハイスピード、移動カメラを駆使した疾走飛越シーンは美しい。試行錯誤をくり返した主人公が家族愛に支えられ金メダルに挑むというスポーツものの常道ストーリーだ。馬好きにとっては面白いが、一般観客にとっては競技自体が単純だし、オリンピックの結果は最初から分かっているので、クライマックスは盛り上がりに欠ける。

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