犬ヶ島の映画専門家レビュー一覧

犬ヶ島

第68回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞したウェス・アンダーソンのストップモーション・アニメーション。近未来の日本。愛犬スポッツを救うため、犬たちが追放された犬ヶ島を訪れた12歳の少年アタリは、心優しい5匹の犬と出会う……。声の出演には、ブライアン・クランストン(「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」)、エドワード・ノートン(「グランド・ブダペスト・ホテル」)、ビル・マーレイ(「ヴィンセントが教えてくれたこと」)ら豪華スターに加え、夏木マリ(「生きる街」)、渡辺謙(「怒り」)、野田洋次郎(「トイレのピエタ」)といった日本人も参加。
  • 批評家、映像作家

    金子遊

    実写映画でもマンガ的な人物造形が持ち味なのだから、アンダーソンがアニメに再び挑んだことは理解できる。労苦の多いストップモーション・アニメをつくりあげたスタッフにも敬意を表したい。だが、監督が黒澤明の映画に影響を受けたという、20年後の近未来日本は奇妙な世界だ。祭り太鼓が鳴り響き、昭和を思わせる街並やお茶の間が登場し、浮世絵のパロディも出てくる。ぶっ飛んだエキゾティック・ジャパンに違和感をおぼえるか否かで、楽しめるかどうかが決まる作品。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    多彩なボイスキャストはW・アンダーソンの御威光だろう。凝り性の監督らしく黒澤明作品のこと、日本文化のことを、実によく調べている。だが街の風景や雰囲気、愛犬を捜す少年が下駄履きだったり等々、話との関係が意味不明な箇所も。監督の幻想の中の日本と思えばいいのだが、文化を弄んでいるようでざらざら感が残る。すべての犬をゴミの島に追放する主題に排除の論理がちらり。すると市長が独裁者にも見え、これが20年後の日本かと思うと少々複雑。楽しめないままに終わった。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    近未来設定の舞台はキラキラのテクノロジー系ではなくレトロな荒廃系。そこにウェス・アンダーソンが目指す「日本」の要素が入ったそれは、「ガロ」を思わせるかつてのサブカル系漫画のテイストだった。キャラクター造形はもちろん、音楽や美術にも戦前・戦中のムードが漂い、単なる懐古趣味ではなく時代の行く末に何やら不穏な空気も感じてしまう。チラシ等に載っていない日本人のボイスキャストも豪華なので必聴。個人的には牛乳バーのマスターが気に入っています。

1 - 3件表示/全3件