あさがくるまえにの映画専門家レビュー一覧
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映像演出、映画評論
荻野洋一
フランス映画(の特に作家の映画)の多くは具体描写が絶えず愛、生、死といった「大文字」へと還元される。しかし本作は、脳死患者からの心臓移植というスタンドアローンな設定に絞った作りだ。唐突に単純化すれば、本作は日本映画に似ている。元来こういう劇構造は、日本映画が得意とするものだ。冒頭、GFとの同衾から去ったブロンド少年が、夜明け前の北仏ル・アーヴルの街を丘陵から港湾までいっきに下降していく躍動感で、いきなり見る側の心は鷲?みにされることだろう。
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脚本家
北里宇一郎
心臓移植の手術寸前、ある人間がある行動をする。以降、それまで登場した人物たちすべてが愛おしく見えてきた。臓器を提供した青年、その家族と恋人。臓器をもらう女性、その子どもたちと恋人。そして手術に携わる病院の人々、その一人一人。前半でさりげなく口にした言葉や、行動、表情などがその画面を契機にことごとく活きてくる。群像劇、なのにそれぞれの人間性がさらりと滲み出て。この脚本の構成は新鮮な驚きだった。作り手たちはひょっとしたら「おくりびと」を意識した?
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映画ライター
中西愛子
夜明け前のル・アーブルの海でサーフィンに興じる少年。青春只中にいるこの彼は、帰路、事故に巻き込まれ脳死状態になる。パリに暮らす音楽家の中年女性。大人になったばかりの2人の息子を持つ彼女は、重い心臓の病を患っている。舞台を異にするこの2つの物語が、やがて命をつなぐ物語として1つに溶け合っていく。母なるものと息子なるもののラヴストーリーに思えたが、個人的には、少年と中年女性の位置が逆じゃないとしっくりしなくて。夜明け前の映像が美しかった。
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