ルージュの手紙の映画専門家レビュー一覧
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
自由な老父に振り回される生真面目な息子、というネタは最近よくあるが、これは男女が逆転していて、しかも母と娘の血の繋がりはない。初老を間近にした娘と勝手気儘な人生を歩んできた継母。娘の職業が助産婦という設定も効いている。ドヌーヴはもちろん堂々たるものだが、この映画を支えているのはカトリーヌ・フロの方だろう。親しみの持てる丸顔に困った表情を浮かべるさまがチャーミング。しかし30年間一度も会っていなかったにしては再会が自然過ぎるんじゃないかしら?
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映画系文筆業
奈々村久生
年齢を重ねてからの女同士の関係にはまだまだ可能性がある。人生も後半に差しかかった女性たちのドラマをこんなふうに描けるなんてフランス映画が心底羨ましい。奔放なドヌーヴと生真面目なフロの噛み合わないやり取りから生まれるユーモア、エスプリの効いたそのセリフ、みなまで語らず、されど殊更に勿体ぶることなく、さりげなく残り香を漂わせるような品のよい描写に監督の力量が滲み出る。自由に生きてきたならではのお一人様ドヌーヴの引き際はいかにも彼女らしい。
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TVプロデューサー
山口剛
質素倹約、真面目一筋で生きてきた初老の助産婦、自由奔放な享楽主義者で、酒、博打、男に目がなく死期間近な零落した老女。30年ぶりに再会する二人を、二人のカトリーヌが競演するのは見ものだ。ドヌーヴが昔の愛人(フロの父)の自殺を知った時の取り乱す姿は流石と思わせる。ただし、過去の回想を封印し、現時点で語られるストーリーは、意図的なのだろうが、いささか消化不良を覚える。ドヌーヴが送ってきた波乱の人生と二人の離別の経緯に誰しも思いを馳せるだろう。
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