ギミー・デンジャーの映画専門家レビュー一覧

ギミー・デンジャー

ジム・ジャームッシュが、ロックバンド“ザ・ストゥージズ”の元メンバーや関係者に取材し、その真実に迫ったドキュメンタリー。1967年、アメリカ。イギー・ポップらは“ザ・ストゥージズ”を結成するが、その先進的な音楽は世間から受け入れられず……。出演は元メンバーのイギー・ポップ、ロン・アシュトン、スコット・アシュトン、ジェームズ・ウィリアムソンら。一般公開に先駆け、特集企画『カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2017』にて上映(上映日:2017年8月18日)。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    「パターソン」でもイギー・ポップのことが話題になっていたが、これはイギーこと本名ジム・オスターバーグ自身が、ザ・ストゥージズの歴史を淡々と飄々とクールに語るドキュメンタリー。ジャームッシュとイギーは、限りなく肯定的な意味における「反知性主義」という点で似ていると思う。過去を振り返りながらも懐かしむわけでなく、死んだ仲間がいても殊更に哀しみに暮れてみせるのでもない、やたら超然とした態度の内に唯一無二の感性が覗く。ライヴ映像があまりないのが残念。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    シニア層のドキュメンタリーは時間との闘いだ。撮影開始からほどなくして被写体を失った中村高寛監督の「禅と骨」がその後たどった迷走と、撮影中にバンドメンバーが他界しアニメを用いた本作が自然と重なる。ドキュメンタリーにおけるアニメの役割はもっと考える必要があるかもしれない。アナーキーなライブ映像、自ら語りまくるイギー、伝説のバンドには似つかわしくないエピソード。長年の友情に裏打ちされたジャームッシュの危なげない手つきがしかしイギーの人間性を中和している。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    ドラッグ、酒、セックスがらみのゴシップは避け、ひたすら音楽に集中して迫るジャームッシュの知的なアプローチは、ロックの世界に残したイギー・ポップの偉大な足跡を巧みに引き出し、私のようなロックに不案内な者にもわかりやすく俯瞰してくれる。このコンビならではだろう。無愛想な口調で語られるエピソードも面白い。上半身裸で犬の首輪だけつけたあのステージ衣裳はハリウッドのB級歴史劇のエジプトの王様からとったと言う。ヴィクター・マチュアかユル・ブリンナーか?

1 - 3件表示/全3件