ギ・あいうえおス 他山の石を以って己の玉を磨くべしの映画専門家レビュー一覧

ギ・あいうえおス 他山の石を以って己の玉を磨くべし

「堀川中立売」の柴田剛監督らによる音楽のバンドのように映画を制作する『ギ・あいうえおス』の実験的ロードムービー第2弾。スタッフが登場人物となり、目に見えないものについて話を聞いていく彼らの旅で起きたことを収録し、フィクションとして編集した。山口情報芸術センター(YCAM)の映画制作プロジェクトYCAM FILM FACTORY第1回作品。第38回ぴあフィルムフェスティバル招待作品部門にて日本初上映(上映日:2016年9月10日、17日)。劇場公開に先駆け、2017年5月19日に渋谷ユーロライブにて特別先行上映される。
  • 評論家

    上野昻志

    冒頭の車の屋根から突き出たマイクが写り、走行音が強く耳に響くのを見たときは、これはと期待したのだが、時間が進むにつれ、期待は萎んで、睡魔と闘うのに苦労した。十人もの男のグループが時折、草原に立って空を見上げているのは、UFO捜しらしいとわかったが、「ギ・目には見えない世界が好きでしたス」とか「ギ・あいうえおスの“ス”は“澄みきる”のス」とか、能書きが頻繁に入るのが鬱陶しい、といっては作り手に失礼で、それをアートとして見せたいということなのでスね。

  • 映画評論家

    上島春彦

    ギはギグ、ということみたい。でも説明は最小限だから解釈は色々できる。ある事象を探索する旅が映画であり演奏である、というコンセプトがじわじわ分かってくる。疾走する車から突き出した集音マイクが方向によって風音をひろったりひろわなかったり、というリズムを基調にして「世界は音だ」という観念が具象性をもって映像化される。「ステップ・アクロス・ザ・ボーダー」という映画を漠然と思い出した。音は確かだが、見えたものは最後まで不確かなまま。それは演出なのか現実か。

  • 映画評論家

    モルモット吉田

    前作を観逃したことを猛烈に後悔させる圧倒的な轟音体験。冒頭の指向性マイクが方向を変える度に響く風音の違いからすっかり魅せられる。「マッドマックス」の様に荒野を改装車で疾走し、野草を踏む音すらも個々の足への力のかけ方が音色に変わる。ディストピアを放浪する少数の生き残った人類を思わせるギ・あいうえおスが音と共にめぐり会う様々な人や建築が素晴らしい。UFOに遭遇しても、この世界なら不思議はない。柴田作品としては「NN-891102」を超える秀作。

1 - 3件表示/全3件