狂覗(きょうし)の映画専門家レビュー一覧
狂覗(きょうし)
「生地獄」の藤井秀剛監督が、宮沢章夫の戯曲『14歳の国』を下地に、学校が抱える問題に切り込んだサスペンス。体育の授業を狙って秘密裏に荷物検査が行われることに。やがて中学生たちの実態や教師の闇、そしてある女生徒の化け物のような面が露わになる。藤井監督はSNSと中学生たちとの関わりを取り上げた新聞記事に触発され、本作を企画。『探偵物語』はじめ数々のテレビドラマのプロデューサーを手がけてきた山口剛が製作総指揮を務める。出演俳優がスタッフも兼ねる体制で制作された。
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評論家
上野昻志
中学校の教室を舞台にしたミステリーというよりサイコ・ホラーに近い感触だ。それは、4人の教師による内密の荷物検査を通して暴かれる生徒間のいじめも、教師が抱える秘密も、ミステリー的な解決には向かわないからだ。というより、何かが一つ明らかになると、さらに闇が深まるのである。それを先導するのは、過去の事件がトラウマとなって、いったんは教師を辞めた谷野であろう。彼が初めから怯えた目をしているのと、科白の録りが気になるが、観客を新たな謎に突き放す結末は○。
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映画評論家
上島春彦
見終わってふと「教師」に引っ掛けてあるのだと気づいた。物語は略。気が重い中身だが教育現場の告発よりも、妄想(ただし事実と解釈できる)と現在と過去のある事件をシャープな編集で連携する手法に監督は賭けている。イントロ(準備段階)を経て教師集団入室後はリアルタイム演出、これが説得力あり。意図的に女の子(複数)の顔を出さず匿名的な表現に徹した処理も面白い。それぞれの教師ひいては観客がそこに想像力を投影するわけだ。いわゆる「黒い日の丸」効果も抜群である。
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映画評論家
モルモット吉田
『14歳の国』が原案という予備知識のみで観始めたので誰がどんな規模で作った映画かも知らなかったが、見事に教室ホラーへと換骨奪胎されている。教師たちが無断で持ち物検査を行うという設定はそのままに〈演劇?映画〉双方の表現を巧みに併用しつつ、別ジャンルへと移行させる。教室から別の空間・時間へと飛躍させる表現、缶ビールを床に落として溢れる液体と、人体の落下を重ね合わせるモンタージュなど、物体把握能力の突出ぶりが際立つ。90年代なら傑作に思えただろう。
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