米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジローの映画専門家レビュー一覧

米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー

第二次大戦後、沖縄で弾圧を恐れず占領米軍に異を唱え続けた瀬長亀次郎を追うドキュメンタリー。2016年放映『米軍が最も恐れた男~あなたはカメジローを知っていますか?~』に追加取材を加え再編集。不屈の男を通し、今につながる問題を浮き彫りにする。監督はテレビ版に引き続き、ニュース番組でキャスターを務めてきたTBSテレビ報道局の佐古忠彦。テーマ音楽はミュージシャン坂本龍一の書き下ろし。2017年8月12日より沖縄・桜坂劇場にて先行公開。
  • 評論家

    上野昻志

    瀬長亀治郎の存在は知っていた。但し、1970年に沖縄初の衆議院議員となり、国会で佐藤首相などと渡りあっていた頃のことで、それ以前の、米軍統治下の沖縄での闘いについては、恥ずかしながら、本作で初めて知った。人民党事件で2年間投獄され、1956年、那覇市長になると、高等弁務官の布令で被選挙権を剥奪されて追放されること10年に及んだことも。映画は、そんな瀬長の「不屈」の精神は現在の沖縄にも生きていると告げるが、それを見るヤマトへの問いかけが些か弱い。

  • 映画評論家

    上島春彦

    原発は過疎地域に丸投げし、基地は沖縄に押しつけてこの半世紀空前の繁栄を享受した民主主義国家日本。カメジローさんの告発は自分じゃ血を流さずに民主主義に鞍替えした日本国民に向けられてもいるわけだ。それにしても誰もが起立して国家に忠誠を誓っている時に一人だけ座っていられる人は、それだけで尊敬に値する。次回紹介する「禅と骨」でも同じことを思った。冷戦構造が解消した今、米国の不安は、中国が沖縄を奪取にくるという強迫観念にある。この世に心配の種は尽きない。

  • 映画評論家

    モルモット吉田

    映画に政治を持ち込むなと言い出す者が増え、過去と今が断絶した本土で暮らしていると、冒頭の米軍が水陸両用車で上陸する戦争映画の如き現代の光景からして過去との距離が一気に縮まる。引退後、95年の沖縄米兵少女暴行事件について亀次郎がどう反応したかを証言ではなく、妻が詠んだ詩で見せるのも良い。山崎貴は出光創業者の半生を描くなら、沖縄戦、収監、刑務所暴動、闘病を潜り抜けて国会に行った亀次郎を劇映画化すべきだろう。これこそVFXで再現する価値がある。

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