サファリ(2016)の映画専門家レビュー一覧
サファリ(2016)
獲物の毛皮や頭だけを目的に動物を狩猟するレジャー“トロフィー・ハンティング”の実態に、「パラダイス」三部作のウルリヒ・ザイドルが独自の映像メソッドで迫るドキュメンタリー。ハンターやハンティング・ロッジのオーナー、ガイドの原住民らを取材する。第73回ヴェネチア国際映画祭、第41回トロント国際映画祭、第29回東京国際映画祭正式出品作品。
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ライター
石村加奈
ザイドルの芸術作品だと思えば得心もいくが、トロフィー・ハンティングがテーマのドキュメンタリーとして観ると面食らう。ドキュメンタリーというジャンルで、ザイドルの好む対立構造は有効ではない。サハラ砂漠に降り注ぐ光の中で繰り広げられる狩猟現場と薄暗い解体場、饒舌な白人と沈黙する黒人。神的視座からザイドルが誘導するエンディングは強烈な印象を残すが、あざとく不快だ(あくまで個人的感想です)。物言わぬ犬にラストを語らせるなら、黒人の声に耳を傾けるべきだった。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
生きるためではなく、楽しむために狩猟に興じる白人ハンターたちを、本作は直接的に裁くことはしない。だが画面を見ながらヘドが出る思いに囚われぬ観客は、一人もいないだろう。シマウマ、キリン、ゾウなど馴染み深い野生動物たちが撃たれ、皮を剥がされ解体される残酷映像ゆえではない。関係者の冷血さとドヤ顔にヘドが出るのであり、さらには、無邪気に動物園で楽しむ私たちとて無罪ではないという潜在的残酷に気づかされる、作者の遠回しの批判精神に虚を衝かれるのだ。
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脚本家
北里宇一郎
さすが「パラダイス三部作」の監督だ。ハンティングを描いて単純な善悪論に堕していない。白人ハンターたちが狩猟への想いを語る。論理的である。が、その口調にどこか後ろめたさも匂う。本番の狩猟の緊張と快感。続いて獲物の解体作業。ここを余すところなく見せたグロテスクさ。これが狩猟の正体というように。その肉を持ち帰り、かぶりつく原住民たちの血まみれの口元。そこに西欧人たちに従属しつつも生き続ける彼らの強靭さが窺えて。それこそがこの映画の真のネラいなのでは。
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