スイス・アーミー・マンの映画専門家レビュー一覧
スイス・アーミー・マン
「ハリー・ポッター」シリーズのダニエル・ラドクリフ主演のサバイバル・アドベンチャー。青年ハンクが無人島で助けを求めていると、波打ち際に男の死体が流れ着く。死体はガスを発し、浮力を持っていて、ハンクがまたがるとジェットスキーのように発進する。出演は、「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」のポール・ダノ。監督・脚本は、本作が長編映画デビューとなるCMディレクター出身のダニエル・クワンとダニエル・シャイナート。2016年サンダンス映画祭監督賞、シッチェス・カタロニア国際映画祭最優秀長編映画賞・主演男優賞、ヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭観客賞受賞。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
アイデア勝負のブラック・ヒューマン・コメディ。なんとなく日本のCM出身オフビート系監督が思いつきそうな題材である。一種のゾンビ映画であり、ネクロフィリア(屍体愛好症)的というか、更には女装ネタも入っていたりして、描写は悪趣味スレスレ、いや悪趣味そのものなのだが、不思議な爽やかさがある。映画が進むにつれ、これは要するに「孤独」にかんする寓話なのだということがわかってくる。ミュージカル仕立てなのも趣向としては面白いが、個人的にはあまり好みではない。
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映画系文筆業
奈々村久生
スイス・アーミー・マンとは生き返った死体、要はゾンビである。その意味では新手のゾンビ映画ともいえよう。ゾンビといえば、先ごろ逝去したロメロの功績で、集団でうろつくフォーマットが古典。近年では俊足ゾンビやお手伝いゾンビなど幅広いバリエーションを展開する一大ジャンルとなっているが、単独ゾンビは珍しい。しかもかなりの高スペック。ついにゾンビもおひとりさまの時代に突入かと思いきや異種ブロマンスまで高飛びとは。ラドクリフの自分探しの一環としては納得。
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TVプロデューサー
山口剛
孤島に漂着している男のもとに流れ着く一個の死体、それを道具のように使って生き延びていくというブラック・コメディのアイディアは秀逸だが、残念ながらその面白さが成功しているとは言い難い。しつこいギャグと下ネタの繰り返しに辟易してくる。タイトル表示では死体のD・ラドクリフがトップになっているが、主役はあくまでポール・ダノの方だろう。だが、死体を相手に、全篇一人芝居で見せ切るには、チャップリン、キートン並みの力量が要求されるので、さすがに荷が重い。
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