ブルーム・オブ・イエスタディの映画専門家レビュー一覧
ブルーム・オブ・イエスタディ
第29回東京国際映画祭東京グランプリ、WOWOW賞W受賞のヒューマンドラマ。ナチスの戦犯を祖父に持つ研究者トトと、ナチスの犠牲者を祖母に持つインターンのザジ。人付き合いが苦手なトトはザジに最初は反発するが、やがてお互いに惹かれてあっていく。監督は、「4分間のピアニスト」のクリス・クラウス。出演は、「パーソナル・ショッパー」のラース・アイディンガー、「午後8時の訪問者」のアデル・エネル。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
最近ホントにナチス映画多いよね(こう書くのも何度目かですが)、どんな事情があるのか知らんけど。昨年の東京国際映画祭コンペ部門で東京グランプリを受賞した本作は、オリビエ・アサイヤス監督作常連のラース・アイディンガーと、ダルデンヌ兄弟「午後8時の訪問者」も素晴らしかったアデル・エネル(ドイツ語を完璧に喋っていて驚き!)が、ナチの戦犯と犠牲者、それぞれの孫を演じる。歴史的背景とラブストーリーの配合は生真面目なヒューマニズムに彩られているが、悪くない。
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映画系文筆業
奈々村久生
ドイツ映画の近作のユーモアセンスが個人的にどうも肌に合わない。ナチスというテーマに対して新しい角度から斬り込もうとする意欲は感じるが、すべてがそのためのネタに思え、生身の人間のドラマとして観られない。エキセントリックな女子大生役のアデル・エネルは、ダルデンヌ兄弟の作品ではストイックな表現から豊かな感情が立ち上がって見えたが、泣きわめくほどパフォーマンスの粋を出ず、むしろその言動が彼女の内面に迫るのを邪魔する。ただのメンヘラではあまりに気の毒だ。
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TVプロデューサー
山口剛
ホロコースト研究所でナチスの犯罪を研究している人間嫌いの歴史学者の主人公を中心に、自己の信ずるものに直情的に没頭し、協調性やユーモアのまったくない変人たちのおりなすブラックな喜劇であり恋愛劇である。彼らのナチ犯罪への過剰なまでのこだわりがこの映画であり、昨今多いナチス映画の中ではひときわ異色を放つ作品である。大戦中はドイツと同じ同盟に属した敗戦国であるにもかかわらず、戦争犯罪に不感症になりつつある我々に突きつけられた痛烈な問いかけである。
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