わたしたちの映画専門家レビュー一覧
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
ソン役の女の子のいつも微妙に物憂げな、損したような表情と、アーモンド形の澄んだ瞳が忘れ難い。こどもは純真なんてのはオトナの勝手な思い込みであり、こどもにだって、こどもだからこそ、ほとんど世界が終わるくらいの複雑で痛ましい出来事が、沢山ある。にもかかわらずオトナは自分もかつてはこどもだったことを忘れて、それを大したことだと思わない。この作品のすぐれた所は、以上のような「紋切型」を、俳優たちの不安定に輝く存在感が軽く超えているところにある。秀作です。
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映画系文筆業
奈々村久生
少女たちのアップが印象的だ。彼女たちの顔から片時も目が離せない。まだ社会での振る舞い方を身につける前の、経験や常識にとらわれない、あるいはそれらでは取り繕えない感情の一挙手一投足が、息を潜めて見つめるように撮られている。ステレオタイプの安心感とは無縁だ。少女たちが次にどんな表情を見せるのか、相手の行動をどう感じてどう動くのか、それによって関係はいかに変化していくのか。それらを丁寧に積み重ねた細やかな緊張感は超一級のスリラー映画にも匹敵する。
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TVプロデューサー
山口剛
思春期以前の少女の繊細な心理を描いた傑作。いじめが主題だが、監督脚本のユン・ガウンは学校や教師の責任を問うのではなく、あくまで少女たちの微妙な心理に密着し丁寧にそれを掬い取っている。特筆すべきは、イ・チャンドンと監督がオーディションで選んだ主役の少女チェ・スインの驚異的な名演だ。作品の狙いを完全に理解し表現している10歳の少女は、可愛いだけでなくすでにして性格俳優の風貌を宿している。困難な状況を幼い知性とエネルギーで克服していく姿に感動する。
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