しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイスの映画専門家レビュー一覧

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス

カナダの実在の画家、モード・ルイスの伝記映画。町はずれで魚の行商を営むエベレットの家で、住み込みの家政婦となったモード。やがて2人は結婚する。ある日、ニューヨークから来ていたサンドラは、モードが壁に描いたニワトリの絵を見てその才能を見抜く。出演は、「ブルージャスミン」のサリー・ホーキンス、「6才のボクが、大人になるまで。」のイーサン・ホーク。監督は、「荊の城」のアシュリング・ウォルシュ。第28回シネフィスト・サドバリー国際映画祭、第6回モントクレア映画祭、第35回バンクーバー映画祭、第12回ウィンザー国際映画祭で観客賞受賞。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    若年性関節リウマチと闘いながら人々に愛される絵を描き続けたカナダの民衆的な画家モード・ルイスの伝記映画。残念ながら「シェイプ・オブ・ウォーター」は予告篇しか観れてないのだが、(おそらく)同作と同様に、これはもうサリー・ホーキンスの驚異的なまでに完璧な役作りの魅力に尽きる。ああいう愛らしさってなかなか出せるものではない。負けじとイーサン・ホークも武骨だが優しい夫を好演。変に盛り上げないウォルシュ監督の地に足の着いた演出にも好感が持てる。これは秀作。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    観終わった後の読後感で映画「東京日和」を思い出す。中山美穂は美しくスクリーン映えするヒロインだったが、モデルとなった女性を荒木経惟の写真集で見たときの、目の覚めるような感覚は忘れられない。本作でホーキンスとホークの演じた夫婦は病と貧しさの陰に包まれ、仄暗い画作りには鬱々としたムードが漂う。彼らの慎ましやかな生涯に美を見出すほどには自分はロマンチストではないのだと思ったが、ラストに出てくる実在した二人のモノクロ映像から受けた印象は全く違ったのだ。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    芸術家の生涯を描いた伝記映画というよりは、ある特異な夫婦の人生のドラマだ。純粋な魂を持った女と粗野で頑迷な男……フェリーニの「道」を思い出す。幼児期のリウマチで不自由な体、一族の持て余し者の絵の好きな女、孤児育ちで人間嫌いの貧しい魚商人。雪の振り込む小さな小屋。生涯を振り返り幸せだったと女は述懐する。特異に見えるが、あらゆる夫婦に共通する夫婦の肖像とも言える。カナダ東部の雪景色は美しく、男が荷車に女を乗せて雪の中を走るシーンは忘れがたい。

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