去年の冬、きみと別れの映画専門家レビュー一覧

去年の冬、きみと別れ

芥川賞作家・中村文則のベストセラー小説を「グラスホッパー」の瀧本智行監督が映画化したサスペンス。盲目の美女が巻き込まれた謎の焼死事件。新進気鋭のルポライター耶雲恭介は、その真相を追ううちに、いつしか抜けることの出来ない深みにのみ込まれていく。EXILE、三代目J Soul Brothersのメンバーで、「植物図鑑運命の恋、ひろいました」「HiGH&LOW」シリーズなど俳優としても精力的に活動する岩田剛典が主人公・耶雲恭介を演じる。共演は「ピーチガール」の山本美月、「昼顔」の斎藤工、「サイドライン」の浅見れいな、「劇場霊」の土村芳、「8年越しの花嫁 奇跡の実話」の北村一輝。脚本を「無限の住人」の大石哲也、音楽を「マエストロ!」の上野耕路が務める。
  • 映画評論家

    北川れい子

    「最後の命」「悪と仮面のルール」そして本作と、中村文則原作の映画は、設定もキャラクターもいかにもフィクショナルで、有りそう度より無さそう度が先行、だからその無さそう度を無責任に楽しむに限る。特に本作の場合、主人公は男だが、ちょっと危ないロマンス小説的な雰囲気もあり、そもそもタイトルからしてそのノリ、おまかせ料理よろしく、出されたものをその都度、味わい、口に合わなければ残せばいいだけ。とは言え、素材(人物)より器と盛り付けばかりが目立つ気も。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    (たまたま読んでいた)原作ほどじゃないがやはり話が(というか、ミステリー的であろうとする、謎やらサプライズやらがあることが)おもしろいので見られる。資料集的に事態が回想され語られる原作のスタイルは小説らしいが、現在進行形で行きたいのが映画としては自然な(?)翻案か。だがそこで生じた省略や単純化で物語がパワーを増したかというと疑問でもある。世界はガンちゃんとそのファンのためにまわっているのか。……いるな。北村一輝のただものじゃない感が素晴しい。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    核心に触れるならば、登場人物を演じる役者たちの外見が美しいことは、この物語の解釈をミスリードさせる要素のひとつとなっている。ある視点からだと純愛物語のように見えるのだが、別の視点では強烈なストーカーの物語に見えるからだ。「映像化が困難」とされた原作の要素を見事に映像で表現させ、映画オリジナルの章立てによる構成の妙によっても、別の意味でミスリードを生んでいる。また、鏡に映る、或いは、水溜まりに映る“もうひとつの姿”など、物言わぬ伏線も巧みに演出。

1 - 3件表示/全3件