ライオンは今夜死ぬの映画専門家レビュー一覧
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
冒頭、ジャン= ピエール・レオーの顔に少なからぬ衝撃を受け、それはすぐさま感動に変わった。主人公ジャンを虚構の人物としてのみ受け取るのは不可能だし、諏訪監督もそれも込みで、というか、それをこそ撮っている。だからこそ、レオーをこの映画で初めて見たとしたら、と自分に暗示を掛ける。それでもやはり、私は観終わった後、しばらく口が利けなくなるくらい、したたかに打ちのめされていただろう。テーマとしては、やはりフランスで撮られた「ダゲレオタイプの女」と繋がる。
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映画系文筆業
奈々村久生
子供たちの被写体になったジャン=ピエール・レオーが、彼らの作った映像を一緒に見て、シンプルで美しい、映画づくりを純粋に楽しんでいる、と言う。レオーの口からその言葉を聞いて、自分が言われたかのように泣けた。少なくともそうありたいと願っている。だけどそれがなんと難しいことか。盗撮を試みる子供撮影隊の中で、録音用マイクの風防のふわふわが隠れきれずに見えている描写は、あざといと思いつつやっぱり可愛い。ラストにレオーが見せる「死」の芝居に鳥肌が立つ。
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TVプロデューサー
山口剛
ジャン=ピエール・レオーというと「大人は判ってくれない」のラストシーンのクロースアップのイメージが重なってしまうのは宿命かもしれない。以後数々の作品に出演し、常に俳優としてより映画の一部であるような存在感を示し続けてきたこの特異な俳優の晩年を代表する記念碑的な映画だ。撮影中の老優と彼を慕い追い回す映画小僧たち。ヌーヴェル・ヴァーグの作家たちに捧げられた見事なオマージュを日本人の監督が作ったのは嬉しい。死の影がただよう映画だが、明るく楽しい。
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