ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男の映画専門家レビュー一覧

ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男

ニコール・キッドマンやミシェル・オバマ前米国大統領夫人など、世界中のセレブから愛されるファッションデザイナー、ドリス・ヴァン・ノッテンに密着したドキュメンタリー。スキャンダルと無縁で、何事にも全力で取り組む完璧主義者の素顔が明らかになる。監督は「マグナム・フォト 世界を変える写真家たち」のライナー・ホルツェマー。ドリス・ヴァン・ノッテン本人の他、アイリス・アプフェル(「アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー」)らが登場。
  • ライター

    石村加奈

    ドリスの鼻歌、ショー後にパートナーのパトリックと交わすキス、森の中での丁寧な暮らしぶりなど(愛犬ハリーのお利口ぶりも含めて)孤高のファッションデザイナーの日常はドリス・ヴァン・ノッテンの世界観を損なわぬ美しさに彩られている。エレガントなドキュメンタリーの中で、インド刺繍に魅せられたドリスが、現地に工房を作り、インドの職人の雇用安定にも乗り出しているという、敏腕経営者の一面は興味深く、ハリーのサービスショットを少し減らしてでも、掘り下げてほしかった。

  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    本作で起こっているすべて、どんなに小さな仕草、振る舞いに至るまで感動的だ。映画として優れているからか、それともただ単に私自身がヴァン・ノッテンの服(特に女性服)を好きなだけだからか? 「マノロ・ブラニク」のようにセレブの社交性に寄った作りよりも、アルティザンの手作業にカメラを向けたものの方がいい。無駄をなくし、より良いものを求め、選び直したり手を止めたりする、そんな時間を共有することこそアートドキュメンタリーの魅力であり、本作にはそれがある。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    シンプルだけど華があって。鮮やかな色彩を使っていても、柔らかさと落ち着きを感じさせる。ドリスの感覚はカッコいい。特にマリリン・モンローを題材にした服の創作。素材選び、男性モデルに服を着せてデザインを決めていく、そのプロセスが面白く。ドリス自身の普段着の素朴なコットン生地、ショー終幕のあっさりしたお辞儀、そこに飾らぬ個性が匂う。インタビューに記録映像を絡ませ、私生活のスケッチを盛り込んだ構成。その手法に新味はないが、ドリスにマッチした簡潔さで。

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