BPM ビート・パー・ミニットの映画専門家レビュー一覧
BPM ビート・パー・ミニット
第70回カンヌ国際映画祭グランプリ、国際批評家連盟賞他に輝いた青春ドラマ。1990年代初頭、カリスマ的リーダーのショーン、彼に恋するナタンら活動団体ACT UP-Parisのメンバーたちは、HIV/エイズへの偏見や無理解と命を燃やして闘う。監督は「イースタン・ボーイズ」のロバン・カンピヨ。ACT UPで活動していた監督が、自らの体験を基に限りある生を謳歌しようとする若者たちの姿を、脚本家のフィリップ・マンジョとともに作り上げた。第90回アカデミー賞外国語映画賞フランス代表作品。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
タイトルやポスターからは想像出来ないほど、不器用なまでに生真面目な作品だ。90年代初頭フランスのHIV/エイズにかかわるアクティヴィスト組織ACT UP-Parisの活動をドキュメント・タッチで描いたもので、2時間23分という長い上映時間を使って、当時の運動の全容をじっくりと再現してみせる。クラブ系ダンス・ミュージックの用語として知られる「BPM」のもうひとつの意味、心拍数に着目した題名は意味深いが、日本だとあまり機能しないかも。アデル・エネルは相変わらず上手い。
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映画系文筆業
奈々村久生
血の赤、集会やデモ行進で掲げられるスローガン、教室で若者たちが交わす激論。90年代のパリを舞台に描かれる、政府や企業に対して声を上げた若きエイズ活動家たちの闘いには、革命の歴史、政治の季節といったフランス映画の一つのエッセンスがしっかりと受け継がれている。ドキュメンタリータッチの討論シーンが大きなウェイトを占め、そこで飛び交うフランス語のやり取りがビートのように聞こえる見せ方も、「パリ20区、僕たちのクラス」に脚本と編集で関わっていたというカンピヨ監督の経歴を知ればうなずける。
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TVプロデューサー
山口剛
20数年前のフランスでエイズ感染者とその支援者たちがこのような活動に取り組んでいたことを全く知らなかったので衝撃を受けた。ACT UPの運動に集まっている若者たちーー過激派、穏健派様々な意見が飛び交いながら一つの政治運動としてまとまっていく集会の描写がみずみずしい。両親が5月革命世代なのだろう。そして一組のゲイカップルのラブストーリーが始まる。過激なセックス描写をまじえながらも、この種の映画では初めて見るピュアで美しいラブシーンである。
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