日日是好日(にちにちこれこうじつ)の映画専門家レビュー一覧
日日是好日(にちにちこれこうじつ)
森下典子の人気エッセイを「光」の大森立嗣監督が、黒木華主演で映画化。20歳の大学生・典子は、突然母親から茶道を勧められる。戸惑いながらも従姉妹の美智子と共に、タダモノではないとうわさの茶道教室の先生・武田のおばさんの指導を受けることになるが……。共演は「万引き家族」の樹木希林、「あやしい彼女」の多部未華子、「海を駆ける」の鶴田真由、「ばぁちゃんロード」の鶴見辰吾。撮影を「リバーズ・エッジ」の槇憲治、音楽を「羊と鋼の森」の世武裕子が務める。
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評論家
上野昻志
茶道の稽古を、帛紗の畳み方からはじめ、これほど徹底して丁寧に描いた映画は初めてだろう。樹木希林演じる武田先生は、まず形から入ると教えるのだが、それを受ける黒木華や多部未華子の初めはぎごちなく、次第に習熟していく立ち居振る舞い、手の動きが、静謐さのなかにアクションとして映画を息づかせる。静と動。動の極みは雨にうたれながら亡き父に呼びかける黒木華だが、全篇にわたる光の処理の的確さもさることながら、最近の映画では珍しく、音が立っていることに感心した。
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映画評論家
上島春彦
配役が豪華で話が薄いのは「億男」同様。ただしこちらは茶道の所作自体が映画的で楽しい。その形の意味を問われて樹木先生が絶句するあたり、教育テレビの講座とはだいぶ違うが、そういうのがドラマの良さ。彼女の「なのよねー」という台詞がかつての『ムー一族』とかの感じを残していてやけにおかしかったものの、喜劇ではない。エッセイ映画とでもいうべきか。主人公の父親以外は男の存在をぎりぎりまで消してあり効果的。ただ父親への感謝という部分に関しては舌足らずな印象。
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映画評論家
吉田伊知郎
訃報の翌日に観るのはどうかと思ったが、樹木が若々しい声で足早に玄関に現れる初登場ショットに張りのある演技を認めて安堵。80年代を引きずる90年代初頭から始まる異文化ものだけに森田芳光的な匂いがするが、脚本も兼ねた大森監督が適材かと言えば最後まで釈然とせず。風景の中で人物を際立たせる才気にあふれた監督が茶室に蟄居させられるのが窮屈に見えてくる。説明の多いモノローグが効果的とも思えず、古めかしい家族劇へのアイロニカルな視点が欲しかったところ。
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