ローズの秘密の頁(ぺージ)の映画専門家レビュー一覧
ローズの秘密の頁(ぺージ)
アイルランドの作家セバスチャン・バリーによる小説を「ドリームハウス」のジム・シェリダン監督が映画化。赤ん坊殺しの罪で40年間を精神病院で過ごしてきたローズ。罪を否認し続けるローズの封印されてきた過去が、1人の医師と1冊の聖書によって暴かれていく。出演は「キャロル」のルーニー・マーラ、「フォックスキャッチャー」のヴァネッサ・レッドグレイヴ、「キング・アーサー」のエリック・バナ、「シング・ストリート 未来へのうた」のジャック・レイナー、「ダイバージェント」シリーズのテオ・ジェームズ。
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ライター
石村加奈
海まで逃げても捕らえられてしまう、女にとって不自由な時代を生きたローズの半生に「マグダレンの祈り」(02)を観た当時の衝撃が鮮やかによみがえった。戦争映画同様“こんな時代があった”という悲しい事実を忘れぬよう、折々に打ち出していかねばならない類の作品である。「愛を込めて見たものは真実、あとは妄想」と断言する年老いたヒロインの背中は、若き頃よりしゃんと伸びている。変わらぬ知的な声も健全な証。時を経たからこそ、映画的なラストには普遍的な希望を感じる。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
精神科病棟に幽閉された女性の悲劇が回想形式で語られるが、真実がつまびらかとするのは、本作が女性の受難についてだけではなく、いやむしろそれ以上に男性の卑劣さについての映画だという点だ。嫉妬に狂った町の権力者(アイルランドの田舎町のカトリック神父)が片思い女性の人生をどのように台無しにしたかについて、本作は論難する。スビギャンツェフ全作品を手がけるロシアの撮影監督ミハイル・クリチマンの画面が鮮烈。一方J・シェリダンの演出は手堅すぎる感あり。
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脚本家
北里宇一郎
精神科病院に長年収容されている老女の過去の謎。それが次第に解き明かされる。ミステリーというより、これも往年のメロドラマ風。だけど描かかれる中身はキビしくて。第2次世界大戦中のアイルランド。その漁師町に避難してきた若い女性が、戒律に縛られ偏見にさらされての恋愛と受難。けして甘くない。だけど物語は意外に古風で、シェリダン演出もあえてクラッシック・スタイルで見せ切った。ルーニー・マーラがかつての美人女優ジーン・シモンズを彷彿させて。よくまとまった佳品。
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