洗骨の映画専門家レビュー一覧

洗骨

照屋年之(ガレッジセール・ゴリ)が自らの短編「born、bone、墓音。」を原案に監督・脚本を手掛けた長編映画。風葬された死者の骨を洗う風習“洗骨”が残る沖縄諸島・粟国島を舞台に、バラバラだった家族が絆を取り戻す姿や祖先とのつながりを描く。出演は、「散り椿」の奥田瑛二、「ママレード・ボーイ」の筒井道隆、「光」の水崎綾女。2018年JAPAN CUTS観客賞受賞。2019年1月18日より沖縄先行公開。
  • 評論家

    上野昻志

    最初の、葬儀のお清めの席から帰る男が、残った食べ物や果物を一つ一つ求める、その間合いがなんとも可笑しい。それに堪忍袋がキレたかのように怒鳴りつける大島蓉子の伯母がいい。彼女は、その後も、現実に目を背けて酒に逃げる主(奥田瑛二)に代わって、バラバラになりそうな一家をまとめていくのだが、その佇まいや物言いが、沖縄には、こんなおっかさんがいるなと思わせ、楽しい。妊娠した長女(水崎綾女)が歩く道や、洗骨する海辺に南島の空気が感じられるのも良い。

  • 映画評論家

    上島春彦

    沖縄の不思議な風習については岡本太郎がらみで私も知っていたが、現代のドラマで扱われるのは初めて見た。岡本の件も最近記録映画になったと聞く。それにしても女は強い、とつくづく思わせるクライマックス。生と死が断絶するものでなく、むしろ誰かの死によってもう一つの生が始まるといった感触を上手く出した。だから裏の主役と言うべきはアクシデンタルな浜辺での出産を取り仕切る大島蓉子、ということになる。逆に言うと男達の無能ぶりの描出もまた見もの。清々しい仕上がりだ。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    監督は誰かと思ったほど短篇を作り続けていたことを不勉強で知らず、手堅い作りに驚く。すっかり鳴りを潜めた吉本の芸人監督だが、品川ヒロシと照屋が出ただけでも意味があった。沖縄の風習を軸にした家族の物語という枠組みは良いが、男たちが総じて直情的で感情にウラがない。鈴木Q太郎が登場するとボケを全て背負わせてしまうので均衡を崩し、せめて出産シーンなりで彼に与えるべき見せ場を奥田瑛二に譲ってしまうのは如何なものか。大島蓉子のハツラツとした突っ込みが出色。

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