愛と銃弾の映画専門家レビュー一覧

愛と銃弾

“イタリア・アカデミー”と呼ばれるダヴィッド・ディ・ドナッテロ賞の2018年最優秀作品賞受賞作。クールな殺し屋チーロは仕事場で偶然、幼馴染みの元恋人ファティマに再会。犯罪の目撃者となった彼女を守るため、チーロは裏社会から離れようと決意するが……。出演は「いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち」のジャンパオロ・モレッリ、『僕はナポリタン』セレーナ・ロッシ、「ジョン・ウィック チャプター2」のクラウディア・ジェリーニ。監督は、「宇宙人王(ワン)さんとの遭遇」を手がけたマルコとアントニオの兄弟コンビ、マネッティ・ブラザーズ。2018年イタリア映画祭特別上映作品。
  • 批評家、映像作家

    金子遊

    この感覚、何ともいえず新鮮。映画内で言及される『ゴモラ』のように、強面のおっさんばかり登場する男臭いマフィア映画なのに、唐突に音楽が流れだすと彼らが感情をこめてカンツォーネを歌いだすミュージカル映画だ。地の声と歌声にはギャップがあり、口パクさえ合っていないように見えるのはご愛嬌。あえて日本映画に喩えるなら大阪を舞台にした関西弁のヤクザ映画が、演歌のミュージカルとして完成されたという感じか。こんなミスマッチは岡本喜八の時代劇「ジャズ大名」以来かも。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    殺し屋と看護婦の復活した恋をストーリーの軸にしたこの映画は、魚介類を煮込んだナポリ料理アクアパッツァ(主人公の雇い主は魚王だし)みたいだ。クライムサスペンス、アクション、ラブコメを大鍋に入れ、ミュージカルで大胆な味付け。仲間を裏切っても殺しても二人がずんずん進むのは、さすがアモーレの国。随所に映画愛が見られるのも嬉しい。その一番は「フラッシュダンス」の主題歌を伊語で歌う場面。死者たちの踊りはMV〈スリラー〉を彷彿する。チープ感も美味しく満腹になる。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    ノワールのパロディを試みた壮大なミュージカルコントといった味わい。監督のマネッティ兄弟がファンだというジョン・ウーの過剰な作風を、意図的にネタ化したメタパロディのよう。正統なノワールなら悲劇であるところこそ喜劇的に料理し、コテコテのイタリアンさながらに歌い上げるおふざけにハマれるかは賭けだが、ラストは昨今流行りの伏線回収もの。看護師のファティマは足手まといなだけでイライラするノワールのヒロイン像をこれでもかのウザさで笑いに転化していて痛快だ。

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