母という名の女の映画専門家レビュー一覧
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ライター
石村加奈
「父の秘密」「或る終焉」に続き本作でも監督のまなざしは、少女と呼ぶには十分女の、しかし女と言うには些か可憐な娘たちの生命力に注がれる(ゆえに原題も「アブリルの娘」なのだろう)。それは、ある物事に対して、物語を牽引するほど執着するわりに、対象への興味を失った後の、実にはかない大人たちとは対照的だ。過去2作から引きずってきた蟠りが、本作のラストシーンで晴らされた気分。どんな理不尽に晒されても生きていくことを、フランコ監督は描いているのではないだろうか。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
前作「或る終焉」のショッキングなラストは、あまりにもこれ見よがしで品に欠けていた。今回もまた、娘たちよりも肉体的魅力を備える母親の欲望の暴走で、見る者を?然とさせるが、リアリティショーのように極端な展開ゆえ、単に凄ネタとして消費されかねない。個々のシーンの強度から見て、M・フランコ監督のたぐい稀な才能は間違いない。ただこの大器が真の傑作を撮るのは、まだこれからのことかもしれない。それは、観客を脅かしてやろうという野心から卒業した時だ。
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脚本家
北里宇一郎
いやはやこの頃、未成熟な母親が登場の映画が多くて。ここにも邦題通りのお母さんが。実の娘から赤ん坊と夫を奪うんだから凄まじい。この女主人公をサスペンスとかホラーで描かず、普通のドラマ感覚で演出したところ、そこが面白い。けど、この女の性格にもう少しニュアンスとか、裏打ちもほしく……待てよ。母親がこんな無茶をしたから、娘が自立できたんだ。ひょっとしたら、すべては彼女の作戦? 「或る終焉」の監督だからなあ。そんな裏の企みがあってもおかしくない。はたして。
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