30年後の同窓会の映画専門家レビュー一覧
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批評家、映像作家
金子遊
アメリカの高校に通っていたとき、進学しないで軍隊に入る友人が多かった。軍は青春期に通過するもので、除隊後に真の人生がはじまる。本作にもあるように、ベトナム帰還兵の子の世代がイラクやアフガンの戦争に行ったのだろう。軍や大佐は「戦争の英雄」という虚飾を使うが、反戦か否かの前に軍隊生活が誰もの人生に深く刻まれている国の物語。デラウェアの基地からニューハンプシャーの自宅まで息子の遺体を運ぶ短い旅も絶妙。70年代のニューシネマの香りがする良作でした。
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映画評論家
きさらぎ尚
原作が「さらば冬のかもめ」の作者と知って興味が募り未読で見たが、ベトナム戦争からイラク戦争まで、3人の俳優の名演もあり、監督は今回も時を物語にするのがうまかった。「どの世代にもその世代の戦争がある」との名台詞もあり、二つの戦争の間に湾岸戦争が起ったことも忘れさせない。それだけに、遺体に軍服を着せ棺を国旗で覆う息子の葬儀に愛国心を謳う意図があると思いたくないが、今の政情を見るに不穏さがよぎる。L・ヘルムの哀切な歌声、B・ディランの歌詞が胸に刺さる。
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映画系文筆業
奈々村久生
中年、しかも男同士の友情ドラマということで、リンクレイター作品の中でも新鮮な題材。しかしプロの俳優が3週間のリハーサルをした上で撮影に臨んだというからリンクレイター節は健在だ。この手法はドキュメンタリーとフィクションの狭間を描く彼の専売特許といってもいい。「ディア・ハンター」のリンクレイターバージョン的な世界に枯れ目のスティーヴ・カレル、ベテランの風格の中に凶暴さを滲ませるフィッシュバーンらが映える。あと、バーという空間は横長の画面によく似合う。
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