クワイエット・プレイスの映画専門家レビュー一覧
クワイエット・プレイス
静寂に包まれた世界を舞台に、ある家族のサバイバルを描き、全米で大ヒットとなった新感覚ホラー。音に反応して人間を襲う“何か”によって、人類滅亡の危機に瀕した世界。リーとエヴリンの夫婦は、3人の子どもたちと共に沈黙を守って生き延びていたが……。出演は「ガール・オン・ザ・トレイン」のエミリー・ブラント、「プロミスト・ランド」のジョン・クラシンスキー。クラシンスキーは監督も兼任。
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翻訳家
篠儀直子
シンプルな発想とごく限られた場だけで、これほどの世界が描き出せるのかという驚き。この題材だから当然だけど、音響設計の丁寧さ。屋外撮影の美しさ。冒頭の悲劇がその後の家族に影を落とすという物語構造の力強さ。エミリー・ブラントの凄さにあらためて圧倒される。「ワンダーストラック」と「サバービコン」でそれぞれ注目された子役ふたりが存在感を発揮するのも見逃せない。特に、耳の聞こえない聡明な姉を演じたミリセント・シモンズが、思春期の鬱屈もにじませて素晴らしい。
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映画監督
内藤誠
ホラー映画の表面に子どもが出てくるのはイヤだという人もいるが、ファミリーの人間関係をテーマにしている作品で、子どもの感情など、うまくとらえている。音をたてたら、何かが襲ってくるという恐怖の正体も段階を踏んで怖くなるように仕組まれ、一家が住んでいる場所の荒らされ方が映像として説得力があった。生理的にいたたまれないシーンも、監督とヒロインが夫婦だということで自然に見ていられた。ホラーというジャンルは次々に工夫をこらして、新手を提供してくれるのが楽しい。
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ライター
平田裕介
“音鬼”とでもいうべきか。鬼ごっこ的なルール性はホラーやスリラーを盛り上げる大事な要素。本作のルールは実に単純でわかりやすいだけでなく、どんなに恐ろしくても声を出せないという超絶望的状況までも作り出して巧い。また家族だけの狭い物語ながらも、世界が滅亡状態になっていることをしっかり感じさせる点、ダレなしの90分にまとめた点も見事。短尺ゆえに肝心の出産をめぐるシーンが薄くなっているが。なにかしら声を上げると叩かれる世相を反映した作品と捉えるのも一考。
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