1987、ある闘いの真実の映画専門家レビュー一覧
1987、ある闘いの真実
1987年、軍事政権下の韓国で起きた民主化闘争の実話を映画化。北分子の排除を目論む警察の取り調べ中、1人の大学生が死亡する。警察は隠ぺいを目論むが、検死解剖により原因が拷問であると判明。新聞記者たちは、事件を明るみに出そうと奔走するが……。出演は「天命の城」のキム・ユンソク、「お嬢さん」のハ・ジョンウ。監督は「ファイ 悪魔に育てられた少年」のチャン・ジュナン。
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翻訳家
篠儀直子
「ファイ 悪魔に育てられた少年」も面白かったチャン・ジュナン監督が凄い映画を撮り上げた。全体に強めの演技を採用して、膨大な数の登場人物の人物像を観客の頭に次々叩きこみ、ひとりふたりにフォーカスするというよりは、各人物をリレーするかたちで事態を多角的に語っていく。そのスピード感は「ペンタゴン・ペーパーズ」にも匹敵、どのシーンの演出にも天才的なひらめきがある。実力派若手スターふたりの純愛もからめ、ラストシークエンスでは怒濤のエモーションが押し寄せる!
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映画監督
内藤誠
ソウルオリンピック前の韓国は、日本人旅行客にとっても緊張を強いる国であったが、この映画はチョン・ドゥファン政権下の時代の雰囲気を説得力をもってとらえている。ソウル大学生の拷問死に発する韓国民主化の動きを検事、看守、新聞記者、学生、聖職者と、幅広い人物を登場させて彼らをテンポよく動かす演出はみごと。ターゲットとなるキム・ユンソク演じるパク所長が典型的な悪役とはいえ、脱北者で富裕層に生まれながら家族を殺され、反共思想の鬼となったという設定も興味深い。
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ライター
平田裕介
本作とも関係の深い光州事件を題材にした「タクシー運転手」は、同事件をサバイバル・スリラー風味に活写。こちらは「パリは燃えているか」的なグランド・ホテル形式で韓国民主化運動を追いかけていくわけだが、パク・ヒスンやらユ・ヘジンやら要所々々でイイ俳優をぶつけてくるので引き込まれるし、その経緯についてもスルッと頭に入ってくる。それでいて、しっかり哀号なムードも漂わせるあたりも流石。「哀しき獣」までとはいかぬが、キム・ユンソク対ハ・ジョンウの画には燃えた。
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