シャルロット すさびの映画専門家レビュー一覧
シャルロット すさび
フランス在住で73歳の舞踏家・岩名雅記の監督第4作。70年代アンダーグラウンドのアートを彷彿とさせるロードムービー。パリ。妻のスイコを失った日本人パフォーマーのKは、ガラス店の女主人、朝子や美しいイタリア人女性のシャルロットと出会うが……。出演はイタリアの舞踏家、クララエレナ・クーダ、パフォーマーとして活躍する成田護、「カメラを止めるな!」の高橋恭子。
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評論家
上野昻志
全篇にわたって、さまざまなイメージが散乱する。その意味では、アート映画といってもいいのだが、一応、物語もある。パリ在住の舞踏家が、ガラス店の女主人と親しくなり、彼女を追って東京に行く。そこで、彼の亡くなった恋人の夢を追って二人で旅をし、東北を思わせる土地で奇妙な老人と孫娘に出会う、というような。途中、大道寺将司の句が出てきたりして、オッと思わせるのだが、パリの部分が冗長なのと、散乱するイメージ相互の運動が、いまひとつ見えてこないのが残念。
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映画評論家
上島春彦
昔「フリークス」という映画を見たら上半身だけの人間が出てきた。この映画に出てくるシャルロットもそう。実際は違うけど。芸人の彼女が何故「黒いオルフェ」の主題歌を歌うのか、とか微妙に分からないことも多いが、東アジア反日武装戦線のメンバーで昨年獄中死した大道寺将司の俳句が詠まれるのは何となく納得。主人公にからむ二人の日本人女性の顔が途中からごっちゃになってしまい苦しんだのだが、意図的な処理だった。要するに我々はフリークスとして生きよ、という主題だね。
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映画評論家
吉田伊知郎
武智鉄二から吉田喜重に寺山などを次々に想起しつつ、作者自身の血肉となった表現だけに古めかしさや気恥ずかしさを感じず。73歳の岩名監督による〈ノスタルの映画〉は大林・佐々木昭一郎の近作にも通じる美しい暴走だ。パリの日本人パフォーマーと日本女性の挿話は和洋折衷の魅力と、カット尻に余韻を残さずに次の画を繋げていく居心地の悪さが奇妙に惹かれる。演技と声の異物的活用も良い。後半の日本篇は福島への観念的な捉え方や万引きなど既視感が強まりすぎて乗り切れず。
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