いつも月夜に米の飯の映画専門家レビュー一覧

いつも月夜に米の飯

「おんなのこきらい」の加藤綾佳が「最低。」の山田愛奈を主演に迎え、地元・新潟でオールロケを行った作品。東京の高校に通う女子高生の千代里は、居酒屋を営む母・麗子が失踪したとの連絡を受け、地元・新潟に戻る。そこで、料理人のアサダと出会うが……。共演は「空飛ぶタイヤ」の和田聰宏、「四月の永い夢」の高橋由美子。
  • 評論家

    上野昻志

    男に弱い母親を許せない娘を演じた山田愛奈の、どこか不貞腐れたような顔つき、佇まいがいい。そんな彼女でも、温かそうなのっぺい汁に、大ぶりのおにぎりを見れば、黙って手が出るだろうし、食べれば旨いに決まってる。そこから始まった料理人と二人での店の切り盛りが、突然、帰ってきた母親によって破られる。圧巻は、料理人と母親の結婚披露の場で、娘らしく盛装した彼女が、白無垢に身を包んだ母親と取っ組み合いの喧嘩をする場面だ。彼女は、そうして初めて独り立ちする。

  • 映画評論家

    上島春彦

    御当地映画というのは普通そこを無批判的に良く描くものだがこれは割と容赦なし。さすがに驚く。監督のエキセントリックな持ち味が出たな。しかし悪い印象ではない。逆に「最低。」に続きダメ母に苦労する娘を演じた山田愛奈の低体温的キュートさが好印象だ。とりわけ、母親の再婚結婚式に「贈る言葉」から話がねじれてわけ分からなくなるのが圧巻。でもエンド・クレジットの後まで見れば、納まるように納まる仕掛け、ご心配なく。母親が男と寝てしまうのを見る娘の嫉妬の視線が最高だ。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    まず、登場する食べ物が美味しそうに見えたことに安堵する。こんな当然のことすら覚束ない食の映画が増えたのだが、「おんなのこきらい」でも食を映像で見せることに才気を見せた加藤綾佳だけに地方映画+食の不自由さを感じさせない。ヒロインの憂いを帯びた不機嫌な表情が良く、食と物語の配分も良い。一方、性描写や母と男を取り合うようになると途端に稚拙になり、軽妙さの欠片もない略奪劇と化し、〈いつも月夜に親子丼〉とでも改題した方が良かったのではと思ってしまう。

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