悲しみに、こんにちはの映画専門家レビュー一覧
悲しみに、こんにちは
カルラ・シモン監督が自身の幼少期の体験を元に作り上げ、第67回ベルリン国際映画祭で新人監督賞を受賞するなど、世界中で高評価を受けたドラマ。病気で両親を亡くした少女フリダは、田舎で自給自足の生活を送る若い叔父夫婦の下で暮らすことになるが……。出演は、本作で映画初出演を飾ったライア・アルティガス、本作でゴヤ賞助演男優賞を受賞したダビ・ベルダゲル、同じくゴヤ賞助演女優賞を受賞したブルーナ・クシ。
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批評家、映像作家
金子遊
両親を病気で亡くした少女フリダが、カタルーニャの田舎で叔父夫婦と暮らしはじめる姿を、被写界深度の浅い手持ちカメラで淡々と追う。自伝的な物語だというが、養母に反発したり従妹にちょっとした意地悪をしたり、突発的に家出までするフリダの姿を、距離を保って見つめるようなカメラアイで全篇撮っている。それでいて、少女の気持ちが痛いほど伝わってくるから不思議だ。個人的には、急に新しい娘を迎え入れることになった大人たちの戸惑いのほうに感情移入しながら観ました。
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映画評論家
きさらぎ尚
子どもを描いた映画の成否は、感情移入ができるかにほぼかかっている。これが長篇デビューという監督は、この点を実によく心得ているようだ。それも6歳の少女が孤児になった理由などの説明はせず、かつ孤独や悲しみの心情を感傷に訴えることもしない。自分の居場所を懸命に探し求めている少女と微妙に距離を保ちながら、その表情を捉える手法で、見る者の想像力に訴える。その甲斐あってこちらはずっと少女の心情に伴走。彼女が号泣した瞬間、感情移入は最高潮に。成功を確信した。
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映画系文筆業
奈々村久生
独立問題で話題のスペイン・カタルーニャ地方。その中でも中心地のバルセロナと田舎ではまた生活が違う。両親を失ったばかりのフリダは子供ならではの順応力を見せる一方、自分ではどうすることもできない環境の変化に戸惑いを隠せない。しかしそれを言葉や態度で訴えることはできない。意思とは別に溢れ出てくるものを体現したフリダ役のライアとそれを引き出した共演者、演出が素晴らしい。誰も答えはわからないし、正解もない。きっとこの先もラストシーンは繰り返されるのだろう。
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