英国総督 最後の家の映画専門家レビュー一覧
英国総督 最後の家
独立前夜の激動のインドを舞台に、歴史に翻弄された人々を描くヒューマンドラマ。新総督に任命されたマウントバッテン卿は、妻と娘とともにデリーの総督の屋敷にやってくる。500人もの使用人を抱える大邸宅の2階では日夜、インド独立の議論が交わされる。出演は、「パディントン」シリーズのヒュー・ボネヴィル、「タイム・チェイサー」のジリアン・アンダーソン、「マダム・マロリーと魔法のスパイス」のマニッシュ・ダヤル、「魔女伝説」のフマー・クレイシー、「カルテット!人生のオペラハウス」のマイケル・ガンボン。監督・脚本は、「ジョージアの日記 ゆーうつでキラキラな毎日」のグリンダ・チャーダ。第67回ベルリン国際映画祭正式出品作品。
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翻訳家
篠儀直子
独立前夜のインドで何が起きていたのか、新たな発見を加えて描く、極めて誠実な歴史映画。基本構造としては、分離独立をめぐる話し合いをえんえん見せる映画なのだが、主要人物のひとりであるインド人青年が重要な局面に必ず居合わせざるをえない設定になっているのが巧みな点で、さまざまな社会層、さまざまな場を横断しながら語りが展開し、出番の少ない端役にまで人間味が感じられ、いつしか作品世界に引きこまれる。若者たちの不運な恋の行方も、無駄なく描写して絶妙なバランス。
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映画監督
内藤誠
ガンディーやネルーを中心にインドの英国からの独立を見てきたものには、最後の総督マウントバッテンの視点で描いた作品は新鮮だった。総督の居住する邸宅の豪華さにあきれながら、総督一家を中心に制服を身に着けた使用人たち大勢の人間が、記念写真を撮るシーンにも大英帝国の挽歌を告げる映像として、感銘を受けた。宗教にまつわるインドとパキスタンの境界の線引きが強引で、多くの難民を作った歴史的事実も、映画を通してよく分かり、異教徒の男女のメロドラマの挿入もうまい。
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ライター
平田裕介
意外と知られていない気がするインド独立とそれに伴うパキスタン建国のあらましがしっかりと学べる点は○。分離独立によって生じる宗派対立と内紛を、その状況に置かれたインド人男女の恋を重ねて描こうとするのも良いとは思うのだが、それはそれで別個に完結してしまう。インドに骨を埋める覚悟の総督とふたりを軽く絡ませておきながら、並行させっぱなしなのでなんだか燃えない。本筋よりもエンドクレジット前に紹介される、ある夫婦と監督の関係性に一番グッときてしまった。
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