オーケストラ・クラスの映画専門家レビュー一覧

オーケストラ・クラス

「コーラス」製作のニコラ・モヴェルネが手掛けたヒューマンドラマ。音楽教育プログラムの講師として小学校にやってきたバイオリニストのシモン。やんちゃな生徒たちに手を焼くが、一人の才能ある少年の影響で子どもたちは音楽の魅力に気づき、成長していく。出演は、「幸せはシャンソニア劇場から」のカド・メラッド、「カミーユ、恋はふたたび」のサミール・ゲスミ。第74回ヴェネチア国際映画祭特別招待作品。
  • ライター

    石村加奈

    練習帰りにピザをついばむ先生と生徒、なんて素敵じゃないか! うまいこと親も巻き込んで、楽しみの輪が広がっていく展開も微笑ましい。そもそも本作のモチーフとなった、音楽に触れる機会の少ない子供に、プロの音楽家が音楽の技術と素晴らしさを教えるという、フランスで実践する音楽教育プロジェクトが素晴らしい。エンディングを盛り上げるのは、クラシックではなく、ウッドストックを象徴するフォーク・シンガー、リッチー・ヘヴンズの『フリーダム』とは、たまらなく自由だ。

  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    目標達成への努力という、まるで日本映画のようなフランス映画だ。カド・メラッド演じる音楽教師の描写は、「くちびるに歌を」の新垣結衣や「楽隊のうさぎ」の宮﨑将に比べると上手いとは言いがたく、この手の部活映画、学級映画は極東島国に一日の長あり。ただ本作の特長は移民用アパートの並ぶパリ19区をロケ地とする点。ならば黒人少年が練習に使う屋上はもっと特別な空間にできたはず。今井正「ここに泉あり」のハンセン病施設での演奏会のような突出したシーンもほしい。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    中年のバイオリニストがおそるおそる教室に。生徒はみな移民の子どもたち。バイオリンを媒介に双方の気持ちが寄り添っていく。それをドラマの情緒ではなく、ドキュメント・スタイルのさらりで描いた、この演出。アフリカ系の少年のマスク。彼が初めて楽器と出会った、その目つき。この繊細が主人公を揺るがし、他の子どもたちにも波及する。クライマックスの晴れ舞台まで、筋立ては少しお約束の型通りがうかがえる。けど音楽に打ち込む子どもたちの輝き、そこは本物の手ごたえがあって。

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