マチネの終わりにの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
川口敦子
もう若くはない男女のすれ違いの恋。メロドラマに徹してタイトに濃やかに映画化する手もあったろうと、時代劇も戦争ものも恋愛映画も大作という額縁に収めて薄めるメジャーな日本映画の今、何が面白いかとは別の何かをまず睨む企画の貧しさを恨んだ。例えば重要なモチーフとして登場する割に機能していないヒロインの継父が撮った映画の挿話も、原作にはあるその内容、リルケの詩、戦争との関連等々の細部を大事に活かせる規模で映画にすれば観光的な国際性とは別の核を持てたのでは。
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編集者、ライター
佐野亨
一言で言えば「不正操作」をめぐる物語である。福山、石田のたたずまいが、嫌味な理屈屋に見えてしまいがちな男女をそれなりに好感の持てる人物にしている。が、この物語の真価は、人物への共感ではなく、空間演出の工夫や微細な所作の積み重ねがあってこそ発揮されるのでは。社会派風のシチュエーションを用意して持って回った会話を繰り広げるだけなら、辻仁成の作品で事足りる。ギターの音色もここぞという場面でのみ鳴るべき。桜井ユキの狂気を宿した目の演技は素晴らしい。
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詩人、映画監督
福間健二
重森カメラマンでフィルム撮影ということで期待した感触も、平野原作の純文学らしさも、腰おもく、でもようやく出てきたかというところで、ガーンと骨董品的メロドラマ展開。呆れつつ、西谷監督がこれをどう切り抜けるかという興味で見た。結ばれない二人の、相似的な愚かさと「そうなるしかない」をとりすまして追う。前半からの国際的時事性とゴージャス感は底をつく。ただ次への希望を消さないようにという話の運び。福山雅治のアーティスト、こんな人が確かにいるとは思った。
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