いろとりどりの親子の映画専門家レビュー一覧
いろとりどりの親子
作家アンドリュー・ソロモンが10年間で300に及ぶ親子を取材したノンフィクション本を映画化したドキュメンタリー。自閉症、ダウン症、低身長症、LGBTなど“違い”を抱えた子どもを持つ6組の親子が直面する困難と、その経験から得られる喜びを描く。監督は、ドキュメンタリーシリーズ『Flontline』などを手掛けるエミー賞受賞監督レイチェル・ドレッツィン。
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批評家、映像作家
金子遊
子どもを愛さない親はいない。本作は自閉症、ダウン症、低身長症、同性愛者、殺人犯といった、他人とは異なる特徴をもった子どもとその親に取材している。彼らは一般的には障がい者やマイノリティという言葉で括られがちだが、それを個性として受け入れている親子の姿が印象的だ。低身長症のご夫婦が流産を経験したあと、念願だった子どもに恵まれるシーンは胸を打つ。自分たちと同じ特徴をもっていたらどうするかと悩んだ末、親になることを選ぶその勇気に心を動かされるからだ。
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映画評論家
きさらぎ尚
映画に登場する6組のとりどりの親子に共通するのは、自分たちとは違う子を持つ親と、親と違いのある子たち。主題の「違い」を受け容れるを私的に白状すれば、言うほど簡単ではない。それだけに映画の中で殺人罪で終身刑の判決が下った息子の母親が言う「それでも子どもを愛することは止められない」が胸に刺さる。登場した親子の勇気を讃えつつ、同時に自分の内なる「違い」を受け容れる度量を自問する。そして省庁の障害者雇用水増し問題が発覚した日本でパラリンピックですか!?
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映画系文筆業
奈々村久生
いくつかの異なるマイノリティとその親が登場するが、彼らの幼少時代の姿だけでなく、大人になってからをとらえているのが面白い。障がいを抱えた子どもに比べて、彼らのその後の人生を知る機会は、まだまだ少ないと言える。そうした存在にフォーカスを合わせることは重要だ。ただし、マイノリティであることは特権ではない。マイノリティとして生きる「幸せ」は、他者から認めてもらうだけでなく、自らがマジョリティを認める覚悟なしには手に入らない。理想は常に危険性と裏表なのだ。
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