メアリーの総て(すべて)の映画専門家レビュー一覧
メアリーの総て(すべて)
ゴシック小説の古典的名作『フランケンシュタイン』の著者メアリー・シェリーの哀しくも美しい人生を「パーティで女の子に話しかけるには」のエル・ファニング主演で映画化。19世紀のイギリスを舞台に、18歳にして愛を乞う孤独な怪物を産み落としたその謎に迫る。共演は「高慢と偏見とゾンビ」のダグラス・ブース、「マイ・プレシャス・リスト」のベル・パウリー、「リメインダー 失われし記憶の破片」のトム・スターリッジ。監督は「少女は自転車に乗って」のハイファ・アル=マンスール。
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批評家、映像作家
金子遊
サウジアラビアでマンスール監督が撮った「少女は自転車にのって」の少女は、自転車を買うため、女性の権利を制限する慣習を乗り越えていった。200年前のイギリスを舞台にした本作もまた、時代や舞台は異なれども、16歳のメアリーが男性中心社会と相克していく。詩人のシェリーと駆け落ちした少女が、若くして不倫や貧困や妊娠、バイロンとの出会いなど劇的な人生を歩む。小説『フランケンシュタイン』誕生の秘話というだけでなく、現代に通じる女性の自立が描かれている。
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映画評論家
きさらぎ尚
メアリー・シェリーのこの半生記、『フランケンシュタイン』誕生の話より、むしろメアリーとパーシーのラブストーリーの要素が大。それも二人の恋愛は19世紀の封建的な男性社会を反映。パーシーの身勝手さ横暴さVSメアリー。この点に先ごろ女性の自動車運転が解禁されたが、まだ女性の権利制限があるサウジアラビア初の女性監督だけに、前作「少女は自転車にのって」と共通する眼差しがにじむ。でもファニングが輝くばかりに美しく、この恋愛の通俗ぶりが意外に面白い。
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映画系文筆業
奈々村久生
女性はいまだ社会において不自由な存在だ。19世紀の英国では自分の名前で著作の発表も叶わず、邦訳版も「シェリー夫人」名義の時代があった。女流作家メアリー・シェリーの特異な生い立ちと半生を『フランケンシュタイン』が生まれるビハインドストーリーとして脚色した脚本が素晴らしい。サウジ初の女性監督であるハイファ、若い女性の生きづらさを体現させたら右に出る者はいないエル・ファニングの起用を含め、この物語を今日映画化する製作陣の意図が見事に結実した一本。
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