Girl/ガールの映画専門家レビュー一覧
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批評家、映像作家
金子遊
男性器をつけた美しき主演女優という意味では、「クライング・ゲーム」以来の衝撃。そういえば当時はモザイクやぼかしが入っていたが、いつから芸術映画における性器の描写は解禁になったのか。撮影時16歳だったバレエ学校の学生が、トランスジェンダーのヒロイン役を見事に演じる。その男性化も女性化もしきれていない過渡期の身体が、ホルモン剤を投与中という役柄に説得力をもたせる。未熟な身体の美しさを鑑賞するという残酷さが、実はバレエの中核にもあるのかもしれない。
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映画評論家
きさらぎ尚
よくぞこの俳優(V・ポルスター)を見つけた!? バレリーナの体つきになりたい一心で、二次性徴を抑えるための療法を受けながらレッスンに励む15歳の少年の、痛々しいまでの努力に衝撃を受けつつ、身体の変化に敏感な年頃に特有の表情や仕草の演技に息をのむ。外に理解を求めるのではなく、あくまで自分の内面の葛藤を描いた点が決め手。父親のトランスジェンダーへの理解に救われる。加えて、例えばバイオリンの鋭い音色や照明の色味で主人公の心情を表現した監督に才気を見る。
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映画系文筆業
奈々村久生
自らの肉体が最大の武器であるバレエのパフォーマンスでは、練習でも舞台でも常に体の形を露わにすることが必然であり、自身のそれと日々向き合わなければならない。トランスジェンダーにとって最も過酷な環境の一つであると言える。だが本作におけるその描写は決してマイノリティ特有の体験に終始せず、肉体の変化に直面する思春期の少年少女たちが経験するであろう戸惑いや不安、葛藤、痛みを繊細に掬い上げる。性別を超越したヴィクトール・ポルスターの存在感に驚くばかり。
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