カスリコの映画専門家レビュー一覧
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評論家
上野昻志
いまどき珍しい、博奕絡みの人情話。昭和40年代の高知が舞台だが、その頃でも、まだ、あんなふうな賭場が開かれていたのかね? 主人公は、腕のいい料理人だったが、賭博にのめり込んで店を手放し、のたれ死にしそうなところを昔気質のヤクザに助けられ、賭場で客の世話を焼いて祝儀を貰うカスリコになる、という話の入り口の、主人公の動きや表情が、いまひとつ、話に乗りにくくさせている。また、話の軸になる手本引きは、「緋牡丹博徒」などでもお馴染みだが、いささか緊迫感に欠ける。
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映画評論家
上島春彦
カスリコって何、という大問題は見てれば分かるので略。というかじわじわ判明する感覚も面白い。本格的なギャンブル映画で、かつ土佐ローカルな昭和映画でもある。低予算だろうが配役は新旧うまく混ぜ込まれており、久しぶりに見た大ベテラン服部妙子の朝鮮人老婆もお得な役柄。主人公の仲間で、セコい鎌倉太郎と大らかな山根和馬の対照も効いている。さて、物語の素材となる手本引きだが、任?映画でよく見るサイコロ賭博と違うのでやくざ渡世の陰惨な雰囲気がないのも良かった。
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映画評論家
吉田伊知郎
昭和40年代をモノクロで描くと聞くだけで、無理に時代色を出そうとするチープな映画を思い浮かべそうになるが然にあらず。スタイルを感じさせないスタイルで撮ることで自然と時代性を表出させ、当時の映画と比較しても遜色がないほど。やくざや賭場といった今や形骸化しがちな描写も、石橋らベテラン勢の安定した演技も相まって違和感なし。高橋長英もかつてない存在感で、バイプレーヤーたちがハシャギすぎずに相互を活かし合いながら演じているのを眺めているだけで至福。
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