アマンダと僕の映画専門家レビュー一覧

アマンダと僕

第31回東京国際映画祭で東京グランプリと最優秀脚本賞をダブル受賞したドラマ。突然の事故で姉を亡くした青年ダヴィッドは、身寄りのない姪アマンダの世話を引き受けることになる。消えない悲しみを抱えながらも、2人は次第に絆を芽生えさせてゆくが……。主演は本作でセザール賞主演男優賞候補となった注目の若手俳優ヴァンサン・ラコスト。アマンダ役のイゾール・ミュルトリエは、ミカエル・アース監督に見出され、本作でスクリーンデビュー。
  • 批評家、映像作家

    金子遊

    大人になってみると子どもって他者だ。何を考えているか全くわからない。それが女の子なら尚更だ。シングルマザーの姉が事件に巻きこまれ、24歳の青年が7歳の姪の父親代わりになるまで。あざとい。アマンダが無口になるほど、大人は彼女の心がどれだけ傷ついているか想像をめぐらせてしまう。娘の父親になることは、誰かと結婚すること以上に荷が重い。だって、子どもへの愛情は無償の行為が求められるから。あざとい。誰だってダヴィッド青年の心の揺れに共振せざるを得ない。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    テロ事件で母親を亡くし、突然一人ぼっちになった小学生の少女。不憫なシチュエイションは泣ける映画という惹句がぴったりだが、そんななウェットなドラマではない。テロ事件に社会的、もしくは政治的な意味を持たせず、母親を奪われた一人の少女の、個人の悲劇とする視点があるからだろう。あくまで個人としての二人、少女と叔父の繊細な感情の交感は、だから美しくリアル。そのトーン、つまり二人の悲しみや寂しさや怒りを、寄り添っているように、共有させる叙情性が独創的。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    「サマーフィーリング」からの流れで観るのがベスト。ミカエル・アース監督の作家性やテーマがきれいにつながって作品の垣根を越えた連動が見られる。突然父親の役割を引き受けることになった若手のヴァンサン・ラコストはいわゆるフランス映画ならではの佇まいで、かつてのマチュー・アマルリックやロマン・デュリスみたいな系譜を思わせる。娘のアマンダ役のイゾールが、いわゆる誰もが愛でるような愛くるしいルックスやキャラクターでないのもいい。この路線でもう一本ぐらい観たい。

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