パリ、嘘つきな恋の映画専門家レビュー一覧
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批評家、映像作家
金子遊
セクハラだ、#MeTooだ、とかつてない逆風のなかで、中年男性が恋だの愛だのと口にだすことすら憚られる、このご時世。50歳を目前にして、若い女性の胸の谷間にときめきを感じ、車いす女性のヒロインと恋におちる嘘つき男に、共感を寄せて良いのかどうか。日本では許されなくても、愛について延々と語りあうことができるフランスなら可能か。野暮をいわず、遊び人の男が本当の恋に落ちるラブコメとして楽しもうとしたが、かつての無垢だった時代に戻れないことを悟るばかり……。
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映画評論家
きさらぎ尚
恋した相手が車椅子で生活する女性なので、自分も障害者と嘘をついてしまうとは、ジョスランは実に不心得な男ではある。けれど脚本・監督・主演が人気コメディアンだけあって、嘘の見せ方に取り繕い方、ばらし方がうまくテンポも軽快。最後はユーモラスな感動に持っていくのはさすが。車椅子女性フロランスの、仕事に趣味に積極的で、車椅子でヒールの靴を履くなど、おしゃれもためらわない生き方が素敵。二人の周辺人物のキャラも面白く、見終わって幸せになる大人のラブ&コメディ。
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映画系文筆業
奈々村久生
嘘つき男のジョスランを演じたフランクが本作の監督でもあると知って納得しかない。それぐらい、彼の見せ場には事欠かない。コントみたいな茶番を悪びれもしないようにやってのけるのはなかなかの強心臓ぶりだ。だがヒロインのキャラクターと演じたアレクサンドラ・ラミーの実力でこれが成立してしまう。彼女だけでなくこの映画では意外にも女性たちの心のひだがさらりと演出されている。それだけに、終盤は男気があるんだかないんだかわからないジョスランがやや迷走気味に見える。
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