おかあさんの被爆ピアノの映画専門家レビュー一覧

おかあさんの被爆ピアノ

広島で被爆したピアノをトラックに載せて全国を回る活動をしている調律師の実話を基にしたヒューマンドラマ。東京生まれの大学生・菜々子は、母・久美子が被爆ピアノを寄贈したことを知る。被爆ピアノコンサートに行った菜々子は、自身のルーツを辿っていく。出演は、「Fukushima 50」の佐野史郎、「舞妓はレディ」の武藤十夢。監督・脚本は、「美しすぎる議員」の五藤利弘。2020/7/17より広島先行公開
  • 映画評論家

    川口敦子

    TVドキュメンタリーで被爆ピアノの音色を通じ反戦活動を続ける調律師矢川光則氏に出会い、「平和を考えるきっかけを」と劇映画化に至った五藤監督、「忘れないこと、記憶し続けること、伝えていくこと」との思いに水を差すつもりはないのだが、祖母とその娘である母とのピアノを挟んだ葛藤がもひとつ描き込めないままに、ヒロインの試みだけが浮足立ってしまった脚本の弱さは否めない。そんな“逆境”の中、母役森口瑤子の健闘が光る。広島の晴れた空と〈悲愴〉第二楽章、哀傷の共鳴!

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    TVドキュメントの取材を通じて矢川光則と知り合い、この物語を構想したという五藤利弘監督。題材への並々ならぬ思い入れを感じる。被爆ピアノが表象する歴史に関心を抱く主人公と、「娘を広島と関わらせたくない」という母親。その当事者意識がどのように交わっていくかが物語の核となるが、事実に対する誠実さが足枷となったか、対立から和解への流れがやや予定調和的な気も。当初は大杉漣が演じるはずだった矢川役の佐野史郎がナチュラルな存在感で要所を締める。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    被爆ピアノの音とそれへの思いが中心にあるべきだが、その音色がはっきりしない。これだという演奏がない。被爆ピアノを使うコンサートを続ける矢川光則その人に、佐野史郎。こうしたら窮屈、をあえてやった感じ。武藤十夢は、被爆者の祖母と被爆二世の母の葛藤のために遠ざけられた「広島」に引きよせられる役。修理された祖母のピアノを猛練習して弾く。「がんばったね」だが、実は大事なことをおきざりにしていると思った。画が甘い。題名、なぜ「おばあちゃんの」じゃないのか。

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