ある少年の告白の映画専門家レビュー一覧

ある少年の告白

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のルーカス・ヘッジズ主演の実話に基づくドラマ。牧師の父と母のひとり息子ジャレッドは、ある出来事をきっかけに自分は男性が好きであることに気づく。その告白を受け入れられない両親は、ジャレッドを矯正施設に入れる。監督・脚本・出演は、「レッド・スパロー」など俳優として活躍し、「ザ・ギフト」に続き監督2作目となるジョエル・エドガートン。出演は、「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」のニコール・キッドマン、「ナイスガイズ!」のラッセル・クロウ、「トム・アット・ザ・ファーム」のグザヴィエ・ドラン、「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」のトロイ・シヴァン。第76回ゴールデングローブ賞主演男優賞・主題歌賞ノミネート。
  • ライター

    石村加奈

    少年の母を演じたニコール・キッドマンが格好いい。美しいレースをふんだんにあしらった、牧師の夫に従順な妻風の装いから一転、ショッキングピンクのジャージー姿で息子を救い出してからは、ヒョウ柄のジャケットなどショートヘアによく似合う洋服で、教会に行くのもすっぱりやめて自由な女に。車の窓から手を出す息子をたしなめる母とのエピソードも、母子の関係の変化をさわやかに印象づけている。実話ベースのテーマの重さを考慮してもなお、父子の葛藤には既視感が残るが。

  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    LGBTQへの理解が進む米国で本作が製作されたこと自体がショッキングだ。大学生の主人公を「少年」とする邦題に首を傾げるが、確かにこの大学生はあまりにも両親の庇護下にある。同性愛矯正キャンプの高圧的な指導教官を監督本人が演じたことは重要だ。この教官みたいな人物像、どこかで見たことがある、と記憶を弄るとすぐに思い出した。木下惠介監督「女の園」(54)で名門女子大の舎監を演じた高峰三枝子だ。両者とも、自己抑圧を他者にもお裾分けしたくて仕方がない連中だ。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    同性愛を矯正治療する施設に収容された若者たちの話。いやもう切ない。こうなるとキリスト教も暴力で。流れとしては「カッコーの巣の上で」などの病棟束縛抵抗映画。こういう題材を取り上げたことは眼を惹くが、意外と中身はオーソドックス。ただ少年たちの演技がナイーブなので、ちょいと胸を突かれた。脚本・監督は「ザ・ギフト」が良かったJ・エドガートン。今回も才気というほどではないが堅実の出来栄え。出演作も含め、近頃、彼が関わる映画にマズいものなしのようで。次作も期待。

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