あの日々の話の映画専門家レビュー一覧

あの日々の話

劇団玉田企画の同名舞台劇を主宰の玉田真也が自ら映画化。大学サークルのOBや現役生男女9人が、二次会のカラオケボックスで盛り上がる夜。女子が席を外すと、「今夜はヤレるかも」と暴走する男たち。一方、女子はOGが一年生を呼び出し不穏な空気に……。出演は初演時のキャストに加え、「きばいやんせ!私」の太賀、「チワワちゃん」の村上虹郎。第31回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門正式招待作品。
  • 評論家

    上野昻志

    もとが演劇だけに、舞台ふうな作りだが、それを映画でやることの意味は詳らかではない。ただ、話の運びは、なかなか巧み。最初は正体不明のカラオケルームの男たちが、大学のサークルの集まりの流れとわかったところから、先輩後輩の陰湿な関係や、女子を巡るあれこれ、女子学生とOGとの揉め事など、人間関係の危うさ愚かさを露呈させていく手腕はなかなかのもの。だが、何よりも良かったのは、最後に太賀扮する高卒の従業員の、それ自体邪気のない言葉による逆説的な批判である。

  • 映画評論家

    上島春彦

    集団演技も調和が取れており、さすが人気演目という感じはある。飽きさせない。しかし話が幼稚すぎて星伸びず。今時の女子大生が鞄にコンドームを忍ばせているのが、そんなショックか。それを自分らに都合のいい何らかのサインだと思いこめる男子大学生の神経の方がどうかしている。他の子のバッグあさりに発展する狂乱騒ぎも無茶。悪ふざけだがこれはれっきとした犯罪で、酔ってました、では本当はすまない。状況を誰も分かってないのがある意味凄い。それに実は誰も酔ってないし。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    舞台で見れば面白いだろうと思うのは、客席とカラオケボックスが地続きの空間を醸成できると思わせるから。映画の場合、〈カラオケ〉は最も頻繁に用いられながら、誰が撮っても大差ない狭い空間にすぎない。それを映画的な空間にどう構築するか、演出の技倆が露わになる。別室と同時進行させたりするものの劇中の空間と客席の隙間は埋まることなく、他愛ない会話が本当に他愛なく見え、ハラスメント、マウントの取り合いが、ステレオタイプな描写に堕して見えてしまうのも残念。

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