プロジェクト・グーテンベルク 贋札王の映画専門家レビュー一覧

プロジェクト・グーテンベルク 贋札王

アジア映画界の帝王チョウ・ユンファと香港四大天王の一人アーロン・クォックがW主演した犯罪サスペンス。贋作に手を染めた画家志望のレイは、“画家”と呼ばれる男が率いる偽札組織にスカウトされ、才能を発揮。その一方で彼の冷酷な野望に翻弄され……。監督は、「インファナル・アフェア」シリーズの脚本を手がけ、「インターセプション -盗聴戦-」などでメガホンを取ったフェリックス・チョン。共演は「オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁」のチャン・ジンチューほか。第38回香港電影金像奨(香港アカデミー賞)にて最優秀作品賞など7部門を制した。第31回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門上映作品(上映タイトル「プロジェクト・グーテンベルク」)。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    P・クロソウスキーは名前や肉体を持つ人間のことを「生きる貨幣」と定義し、それを「偽造通貨」のように流通させ、貨幣制度や婚姻制度を転覆させようとした。この世に生まれ出ない蠢くファンタスムを無限に反復させ、そのオリジナルは喪失していく。この作品の中では原型と複製の問題が、絵画、紙幣、犯罪、人間というメディアを使って重層的に語られる。取調室で証言することで、物語は動き出す。モデルが存在しない抽象画のように、現在では語られる事実の存在性が希薄。

  • フリーライター

    藤木TDC

    かつて演じた様々なキャラクターと名場面を現在のチョウ・ユンファが再演し一作品に収納した大御所のセルフカバーベスト盤風……という視点で見れば一作品内によく収めたと誉めたくなるし、銃を手にしたユンファは今もとても美しい。一方でシナリオにしわ寄せがあり、散らかったプロットを時制錯綜でさらに混乱させ、展開も超スローで緊迫感欠如を補う大げさなBGMがかなりうるさい。別の有名作によく似た構成と謎解き含め散漫な内容だが、ご祝儀映画と割り切れるなら見る価値は。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    監督・脚本のフェリックス・チョンの崩壊寸前な大風呂敷の広げ方に圧倒される。ものすごい振れ幅で、成立しているのかすら危ういギリギリな展開を、引っ張って面白く見せてしまう手腕に感心。チョウ・ユンファのこんな使い方があるのかという驚きもいい。面白い映画はリアリティがなくとも、違う次元や文脈で観客を魅了するのだという新たなセオリーを感じた。過去と現在の配分のめちゃくちゃさや、時間軸の巻き戻し方もえらいことをやっていて、特殊な感性の賜物だと思う。

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