LORO(ローロ) 欲望のイタリアの映画専門家レビュー一覧

LORO(ローロ) 欲望のイタリア

スキャンダルにまみれたイタリアの元首相シルヴィオ・ベルルスコーニをモデルに、「グランドフィナーレ」のパオロ・ソレンティーノ監督がメガホンを取った人間ドラマ。政敵に敗れ失脚したベルルスコーニは、怪物的な手腕で政権への返り咲きを虎視眈々と狙う。欲望を満たすためなら手段を選ばないベルルスコーニを「イル・ディーヴォ -魔王と呼ばれた男-」「グレート・ビューティー/追憶のローマ」などでソレンティーノ監督と組んできたトニ・セルヴィッロが演じる。また、ベルルスコーニの妻ヴェロニカに扮したエレナ・ソフィア・リッチは2019年ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞、2018年ナストロ・ダルジェント賞の最優秀女優賞に輝いた。第31回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門上映作品(映画祭タイトル「彼ら」)。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    伊映画界を牽引する名匠ソレンティーノと名優セルヴィッロの名コンビシリーズ劇場。悪ふざけとシリアスが混濁し、セルヴィッロの怪演は頂点に。それもそのはず悪名高き伊元首相ベルルスコーニを演じた。脱税や横領、マフィアとの癒着、そして淫行問題。これだけのスキャンダルがあろうと尚、人たらしで国民からは愛されている。ラクイアでの大地震で家を失った老婦人に限りなく優しく接する。幾つの女性にも愛の限りを尽くす。そこには強くて傷つきやすい無名の普遍的な伊男性がいた。

  • フリーライター

    藤木TDC

    同監督の「イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男」の続篇的なイタリア政界実録映画を期待するも、まったく別物でポカ?ン。フェリーニの退廃、ティント・ブラスの裸女群舞に主演俳優の顔面模写芸を加えフルコース化した大怪作。男性観客には鼻の下伸ばしニヤニヤな艶味だが、ベルルスコーニってここで描かれてるような金満エロジジイ一本じゃないぞ。マフィアとの癒着は言わずもがな、殺人やテロの指示疑惑で何度も捜査線上に名前が挙がってだな……存命中なので盛れなかったか?

  • 映画評論家

    真魚八重子

    P・ソレンティーノがあえて盛る悪趣味さの「わかってやってます」感がどうしてもノレない。157分の長尺とはいえ主人公が途中交代する構成や、ベルルスコーニと妻の関係性が脆いバランスで展開する描写は良い匙加減だ。でもその技も下品な場面とのコントラストも含めて、手管がこれみよがし過ぎる。パーティーがいかにも表象的で「ウルフ・オブ・ウォールストリート」の突き抜けた笑いには至らず、女の体という記号の垂れ流しで辟易させようとする、その意気込み自体に辟易する。

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