HERO 2020の映画専門家レビュー一覧

HERO 2020

劇作家・演出家として活躍する西条みつとしの長編初監督作となる心温まるコメディ。2年限定の約束で始まった広樹と浅美の恋。広樹がその約束をしたのには、ある理由があった。だが運命の日の前日、広樹の妹・真菜は、2人を別れさせまいと、ある行動に出る。出演は「探偵は、今夜も憂鬱な夢を見る。2」の廣瀬智紀、「サニー/32」の北原里英。
  • 映画評論家

    川口敦子

    西条みつとしが書いた「blank13」にあった父と息子の挿話、ハイライトとライターの授受といった忘れ難い細部は原作者はしもとこうじの実人生から掬われたものだそうだが、今回の西条監督・脚本作でも他人事でないモチーフとして活用されている。そこに見て取れる物語する力と意志がバラバラに見えた枝葉を鮮やかに一つに束ねこむ。病室での死神と看護師をめぐる騒動、間合いで醸すその笑いはルビッチは言い過ぎでも「メル・ブルックスの大脱走」級にはおかしい。欲しいのは深み……。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    ショートコント的な設定を引き延ばし、これみよがしの伏線を律儀に回収していくだけの100分。集団ヒーローもの、仮面ライダー、アメコミヒーローと型のバリエーションをなぞってはいるが、本気で思い入れがないのか、いずれもディテイルへのこだわりは感じられず、その差異や背景への無配慮がもっとも切実であるべき登場人物の動機づけにさえ及んでいる。これならべつにヒーローを素材にする必要もなかろう。他作品では好演を見せている役者も型におされて個性を発揮できず。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    まず、筋立てへの疑問。小細工と芝居による超常現象を人が簡単に信じるだろうか。演劇をやってきた西条監督、「もっと演劇にきびしく」という姿勢があるべきでは。組み込まれた演劇的なものが、薄っぺらな効果に甘んじていて、寒々しい。嘘だろうという話に、実写感のない画。これでは、映画が現在の現実に過去も本当の超現実もつなぎうることへの興奮が行き場を失う。考えてみるとみんないい人たち。なかでも手品師、マンガ的にいいやつだが、出すべき芸が用意されていない。

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