屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカの映画専門家レビュー一覧

屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ

ドイツ・ハンブルグで1970年代に実際に起きた連続殺人事件に基づく同名小説を映画化。安アパートの屋根裏に住むフリッツは、夜な夜な行きつけのバー“ゴールデン・グローブ”で孤独な女性に声を掛ける。一見無害そうに見える彼には、実は裏の顔があった。監督は、「女は二度決断する」のファティ・アキン。出演は、「僕たちは希望という名の列車に乗った」のヨナス・ダスラー、「パラダイス:愛」のマルガレーテ・ティーゼル、「マリア・ブラウンの結婚」のハーク・ボーム。第69回ベルリン国際映画祭コンペティション部門正式出品作品。
  • 映画評論家

    小野寺系

    実在の殺人鬼の日常を描きながら、人間の醜さや哀しさを、目を逸らしたくなるところまで克明に描いていく作品なので、万人に薦めづらいところがあるが、それだけに人間の根源的な部分に触れるところがある。そして注意深く見ることで、バーに集まる様々な登場人物と同じ目線に立った、じつは優しいまなざしが存在することにも気づかされる。事件を何らの美化もせずに、しかし美しい寓話のように仕上げた手腕も素晴らしく、闇の名作として後世に残る映画になるだろう。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    生理的な不快感、それも特に前半は視覚と嗅覚の忍耐を強いられる。1970年代に実在した殺人鬼が主人公なのだが、フリッツ・ホンカは言うに及ばず、犠牲になった売春婦、舞台になっている風俗街のバーの常連客は、おそらく第二次世界大戦後の復興の波から置き去りにされ、国からも一顧だにされない人たちであろう。殺人者も犠牲者も、理知を感じさせず、動物的な無様さしかない。せめてカタルシスでもあれば……。特殊メイクの効果も含め、ホンカ役のJ・ダスラーの熱演に★オマケ。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    映画の主人公として登場する猟奇殺人鬼というのは、驚異的な知能の持ち主だったり、独自の哲学を貫いていたりと、何かしらダークヒーローとしての魅力が付加されているのが常だと思うのだが、そういうものが毛の先ほども与えられていないコイツは、ただひたすら自分勝手に人を殺しては「またやってもうたー!」と泣くばかりの正真正銘のゴミクズ人間で、そんな男を徹底的に突き放して描いているこの映画の視座もまたサイコパスのそれに思えてくるに至り、恐怖の果ての笑いが漏れた。

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