未成年(2019)の映画専門家レビュー一覧
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
少女2人のジュブナイルものであると同時に、思いのほかシリアスな不倫ものでもある。それを女と男の対比に落とし込むのではなく、少女2人と母親2人の対比で描いていく。子どもと大人を分かつのは、清潔か不潔かではなく、「生」や「死」への感受性にあるとする脚本が秀逸。その脚本を手がけ、4人の女性の中心にある空洞としてまったくいいところのない男性を演じ、本作で監督デビューを果たした名優キム・ユンソク。未来の韓国映画を担う存在となる可能性十分。
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ライター
石村加奈
大人になれない親と大人になろうとする子供が足掻く。辛い構図だ。不倫して妊娠した挙句「ママは不幸な女なの」と娘を前に号泣する母親には辛さを超えて、腹が立った(実娘の年齢さえ忘れた父親は論外だ)。無責任な親に対して、過酷な現実から目を逸らさぬ、果敢な少女たちが「私は私を信じない」と本音を打ち明け合うシーンには、幼き者たちの心許なさにふれ、ドストエフスキー先生! と叫びたい気分に。カツアゲババア役にイ・ジョンウンなど贅沢な配役は流石キム・ユンソク監督。
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映像ディレクター/映画監督
佐々木誠
女子高生ジュリは父親が不倫をしていることを知る、という核心の部分をすっ飛ばして始まる冒頭。不倫相手の店を覗くジュリ、それを睨むその女の娘で同級生のユナ(演じるパク・セジンの面構えにグッとくる)。このお互いの親の不貞で知り合う二人の軋轢、大人になれない親たちの葛藤が交錯し、「秘密」によって変化するそれぞれの人生を丁寧に描いている。「チェイサー」などのキム・ユンソク初監督作品で自身も父親役で出演しているが、中年の悲哀を滲ませる軽妙な演技が新鮮。
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