ヴィタリナの映画専門家レビュー一覧
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非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト
ヴィヴィアン佐藤
カーボ・ヴェルデから亡き夫の幻影を追ってリスボンのスラム街ファンタイーニャス地区へやってくるヴィタリナ。一貫してファンタイーニャス地区が舞台であるコスタ。かつてカーボ・ヴェルデと言う島の名前をクリス・マルケルで知った。奴隷貿易で有名なポルトガル領だ。その土地に折り畳まれた歴史と記憶。ヴィタリナは既にこの世に居ない不在の夫に寄り添う。しかし内面は憤怒と失望が横溢。次第にそれらがが消えていくとき、夫の不在は非在だったことに我々は気づくのである。
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フリーライター
藤木TDC
娯楽作を求める観客には用のない芸術映画。が、映像を闇とモノトーンで設計し、音響を極力排して画面と客席を有機的に接合させる演出には現代美術鑑賞に似た緊張と刺激を感じた。長編詩のような抽象的物語ではあるものの、ゲットー、底辺労働、監獄、地下水道など大都市の暗黒面のイメージを通し格差問題やメメント・モリを痛みと共に伝える。メッセージが鋭く刺さるほどに、こうした作品をエアコンの効いた快適な劇場で優雅に見て語るべきかのジレンマがつきまとうのだが。
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映画評論家
真魚八重子
ペドロ・コスタの家シリーズの極みというか、狭い室内で人生が全うされる究極の世界だ。コスタも昔は、撮影機材にこだわりを見せず、ノイズが入った映像をかけていた作家だったのに、本作は各ショットの構図がベラスケスの絵画のようにキマッていて完璧。黒から褐色への暗い色調の変化と微かな光も、人間や男女にとって原初的な物語も、研ぎ澄まされた到達感を覚える。ただアート色の強い作風ゆえ、本当に静止している画面が多いので、気軽に対峙できる作品ではない。
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